関西の大家業をもっと楽しくする
ヒント集
vol.86
2018.05.21
弱みを強みに変える。
内覧時のきっかけトークメモ
写真はイメージです
決まらないから、
AD料をはずむ
空室の物件対策として、まことしやかに仲介会社への商品券などお礼のアップや、AD料のアップなどを、いまだにノウハウとして記載している専門家がいます。「そうでもしないと案内してもらえない」という不安感からかもしれませんが、そうした手法をとっても「だからと言って、この物件をどう勧めるのか」という物件もあります。
シンプルに言えば、「代官にワイロを渡せば、通らない稟議も通してもらえる」みたいな事は、「とはいえ通せるだけの魅力がない」とあまり効き目はないのは自明の理です。
物件を科学すると、
「検索」「閲覧」「反響」「内覧」
まずは、大切な収益物件はネットで検索されているのでしょうか? 仲介会社側ではポータルサイトでの「検索結果画面一覧PV」を把握する事が可能です。スーモなどで、月にどのくらい検索されているのかを数えることが出来るのです。同様に「詳細画面PV」「反響数」も把握可能です。管理会社の中にはこれらをマネジメントツールとして取り込み、分析している会社もあります。
検索もされていないのなら
「検索結果画面一覧PV」がほとんどないという事は、お部屋探しをしている人が、検索をしても全く引っかからないという事。ということは賃料がマーケットアウトしていて相場より高いか、それともバストイレ別・エアコン・温水洗浄便座・ネット無料・駐車場付きなど、近隣の物件の設備条件で負けている可能性が高いのです。
だとすれば、仲介会社への謝礼を法外に上乗せしても、検索はされないのですから、入居は決まりにくくて当然です。その投資を物件に注いだほうが良いでしょう。
検索はされている。
しかし詳細画面が見られていない
一方、「検索結果画面一覧PVがそこそこある」のに「物件詳細画面PVがあまりない」のは、一覧表の写真で負けている可能性が高いと言えます。わかりやすく言うと、検索には引っかかっているのに、写真に魅力がなくて押されない。スーモ・ホームズなどの一覧表に出てくる写真がピンボケだったり、日陰だったりすると、数あるライバル物件の中から、入居希望者さんに押してもらえません。写真をよくしないと。ステージングなどして写真の見栄えをよくして決定力につなげている大家さんもいます。
詳細画面まではたどり着いているが、
反響が取れないなら
さらに、詳細画面までは高い数字だけど、反響が取れないケース。これはポータルサイトの詳細画面に描かれている文言などが魅力的でないのかもしれません。
こうした対策を管理会社と相談しながら、丁寧に工夫を重ねるほうが入居は決まりやすくなるものです。
内覧はされているのに
なかなか決まらない時は
さて、「一覧PV」「詳細PV」「反響」もあれば、月に何度か「内覧」はあるでしょう。そもそもAD料アップも「ついでに内覧してほしい」という他力本願の施策でもあります。
ところが、内覧はあるけど決まらない。物件はそこそこ強化したものの、近隣のほかの物件と大差がない。こうしたケースがやっかいです。ここまでは、ネットで探す時代に対応して数字で対策が出来ますが、見学してもフラれてしまうケース。この対策もオーナーが出来ることがあるのです。
内覧時のサポートをする
案内時の魅力メモを貼る
ご自身でライバル物件を実際に見学してみると、こうした工夫に出会うことがあります。
案内している際に、サポートになるように「天気がいい日に、この窓から富士山が見えます」「シューズボックスは12足収納可能です」「追い焚きが可能です」「無料Wi-Fiが使えます」といったメモ書きを部屋のあちこちに貼るという工夫です。
初めて案内する営業マンが多いのも現実なので、彼らが説明しやすいように、あるいは彼らの説明が不十分でも入居希望者さんに伝わるように、簡単なメモを貼るのです。
致命的な弱点は、
長所に言い換えられないか
例えば「駅から遠いなどの立地」。
どうしても「遠いから決まりにくい」という物件は、AD料を積んでもやっぱり決まりにくい。そこで「郊外ですので夜は静かです」「ショッピングモールも近く便利です」といったメモを置いておく。立地の短所をなんとか長所に変えられないかと考えるのです。
「セキュリティやプライバシーに難のある1F」も決まりにくいものです。「オートロック・人感センサー・防犯カメラでセキュリティも安心です」「窓の下は玉砂利を敷いて侵入しにくくしています」「塀があるので道路からの視界はさえぎられます」など、対策を講じていればメモを貼っておきます。あるいは「1Fなので買い物を運び込むのも便利です」「1Fなのでベビーカーも前の庭に置けます」など1Fの短所を長所に変えるメモです。
畳であれば、「赤ちゃんが転んでもクッション性がある畳部屋です」「押入れに布団を入れれば、日中は広く使えます(ベッドを置いたらそうはいかない)」など。
仲介の世界も
働き方改革?
本来は、そういうセリフを言うのが仲介会社の仕事なのですが、ネットが進んだからでしょうか、なかなかそうしたトークが現場で出来なくなってきています。
実は、部屋の案内はバイト君や内定者がしているケースもあります。驚いたことに不動産会社も人手不足なのです。
業界紙を読むと、「タクシーで内覧」とか「修繕会社に内覧の移動を頼む」という会社もあるようです。繁忙期は特に忙しく、「内勤のスタッフが代行案内をしている」という事もある。これでは、褒美を奮発しても、いいセールスアピールが期待できません。
だとしたら、私たちもこうした変化を受け止めて、案内のサポートをしてあげればよいのです。かわいいメモをちょっと置くぐらい、私たちオーナーなら出来るはず。仲介の働き方が変わっているのなら、それを嘆くよりも、その変化に対応する工夫を増やしていきましょう。