関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.83

2018.04.04

ただ、一球の重み

第90回選抜高校野球大会が熱戦を続けています。今大会では「逆転さよならホームラン」が多いという印象があります。たった一球の失投で、今までの苦労が水の泡という瞬間は、見ていて、勝負事の厳しさという野球というスポーツの深さを感じます。
今回は、収益物件ではどうなのかについて考えます。

写真はイメージです

一球の重みを軽んじる
仲介会社

 たった一球の失投で、取り返しのつかない勝負結果となる、ということが少ないのが賃貸仲介の仕事のように感じられます。期末など締め日でもう後がないというケースならいざ知らず、目の前のお客様の意志決定によって、なにがなんでも今期の成果に大きくかかわるというほどのことはありません。翌日もお客様の来訪はありえますし、成約しなかったからといって、ゲームセットというわけではありません。
 こうした点、売買仲介は商談単価が高く、ひとつの商談が決まるか決まらないかは、歩合給や成果に大きくかかわります。
 つまり、商談のただ一球の失投が命取りにつながりかねないのが売買仲介。さほどの緊迫感がないのが賃貸仲介といえるかもしれません。

収益物件の売り買いは
失投出来ない

 となると、まず収益物件を買おうとするならば、仲介会社は投資意欲があるあなたを絶対逃したくはなく、今こそ買い時、これぞ高利回り、もう一番手ではない、など、提案する投球もこの機会を逃すまいと必死になります。「こんなに仕事に熱心な人なら、きっと自分の物件の客付けもさぞかし頑張ってくれるのではないか」と期待しますが、賃貸仲介は失投を投げまくり。だめでもまた次の打席があるさと、気のない応対で、しまいには「目の前のお客様が家賃を下げてくれれば入居を決めるっていうのですが、もう5000円家賃下げられませんか?」と安易に怒りのど真ん中にスローボールを投げ込んできます。

購入時ほどの緊張感があるか

 こうした際に、購入時にあれほど、清水の舞台から飛び降りるような覚悟で購入した物件なのに、「まあ空けておくよりはいいだろう」と簡単に5000円下げてしまう方もいらっしゃいます。確かに空けておくよりはいいのです。空けておいてもキャッシュは産みませんから。
 しかし、5000円下げてなんとか入れた。隣の部屋もやっぱり5000円下げた。3年ぐらいで入れ替わって、各部屋の収入が5000円下がる。10戸なら5万円。年間で60万円。10年で600万円。20年で1200万円の利益喪失の判断をしたことになります。一球の失投が積もり積もって1200万円。家賃維持して決められる「なにか」というナイスヒットが、たとえばステージングだったり、アクセントクロスだったりするかもしれませんが、失投の積み重ねをしている可能性もあります。

たった一部屋が決まらない
というリスクの大きさ

 当然ですが、収益物件のオーナーにとっては、「たった一部屋が決まらない」ことでの収益損失はとてつもなく大きくなります。5万円の家賃で10部屋の物件。満室なら50万円/月の家賃収入ですが、ざっと25万円/月は銀行ローンと考えると、25万円の粗利。一部屋決まらなくて空いていれば、収入は20万円に20%もダウン。2部屋空けば、15万円と40%ダウンです。年間ではこの12倍ですから、60万円、120万円という損。10年で1200万円、20年なら2400万円を取り損ねたことになります。
 ところが、仲介側は、目の前のお客様が「うーん、この部屋とこっちの部屋、どっちにしようかな」という接客をして、決まったり決まらなかったり。そこでの失投で決まり損ねても、あまり痛恨な出来事と捉えていません。

なぜ「決まらなかった」
のか

 しかるに、「家賃を下げて、AD料を上げて」仲介会社のモチベーションを上げて埋めるしかないのだよ。そうおっしゃる収益物件の投資家の方もいらっしゃいます。そしてキャッシュアウトが多くなります。相場の賃料でなければ確かに決まりませんが、家賃デフレとAD料インフレのジレンマからなんとか抜け出ないといけません。
ヒントは「決まらなかった理由」にあります。
 鍵を借りて案内してくれた営業マンに「先日、内見してもらった物件だけど、決まらなかったようだけど、入居希望者さんはなんて言っていたかな?」と聞いてみることをお勧めします。

物件の失投を防ぐ

 たとえば「実は廊下が暗くて、別の物件に決めたいと言っていました」なら廊下の電球を変えてみる。「玄関が古くてイメージが悪い」と言われたなら、花でも飾って、きれいなマットを引けばよい。「階段が汚かったのが不評でした」なら掃除をする。「駐車場に車を入れにくかった」なら、駐車スペースを仕切りなおしたり、ちょっとカーブミラーをつけてみたりするなど対応の方法もある。「駅から遠いのに、自転車置き場に屋根がないから」「郵便ポストが壊れているから」「ゴミ置き場が散らかっていたから」などどこが弱点かの発見があるかもしれません。しかし、仲介の営業マンはその致命的な失投を見逃して、ほかの物件に決まったとしても数字になりますから、わざわざ教えてくれていないかもしれません。
 見学時に思わぬ失投をしているかもしれません。カーンとそこで「さよならホームランを打たれている」かもしれません。たった一球の配給ミスでゲームオーバーとなっているかもしれません。見学した人はどう言っていたのかを確認し、失投を防ぐ工夫も今から考えていきましょう。