TOP満室経営のツボvol.79

関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.79

2018.02.07

かぼちゃの馬車事件に思う①。
「だからサブリースは」「だからシェアハウスは」というステレオタイプリスク

サブリースで不動産投資をするオーナーが自己破産に追い込まれているとお聞きします。『かぼちゃの馬車』ブランドで女性専用シェアハウスを運営するスマートデイズが、1/17、サブリース賃料の支払いが困難になったと説明会を開きました。昨年末同業のサクトインベストメントパートナーズに続き、新築シェアハウスの投資トラブルが続いています。
では「これだからサブリースはよくない」「これだからシェアハウスはよくない」という声も聞きます。そこで今回は、かぼちゃの馬車の事件と、サブリース・シェアハウスについて論じます。

写真はイメージです

表面利回りの良い案件が
土地なしであるよ、という話

 今回被害に遭われた方の中には、サブリースが突然打ち切られ、毎月の支払いに苦しんでいる方もいるとお聞きします。あてにしていたサブリース賃料が振り込まれなくなり、本当に大変だと思います。私は軽々の事態を批評するつもりはありません。むしろ今回の悲劇から、被害に遭わなかった方も、投資家として学ぶべきことはあるのではないかと今回のコラムを書きました。
 さて、情報を整理いたします。
今、投資用新築ワンルームマンションは利回りが厳しく、時には最初から持ち出しとなっています。土地代は高く、建築材料費や工事人件費が高いのに賃料相場が下がっています。これでは土地なしの投資家が新築を手に入れるのはなかなか厳しい。
 そんな中登場したのが、この「かぼちゃの馬車」です。10%近い高い利回りを確保していて、とても話題なりました。

どういう戦略だったのか

 シェアハウスにして各住居にはバストイレキッチンなどをつけないという方法で建設費を浮かす。こうすれば、ほかの新築投資用物件よりも、利回りを高く設定出来ます。
 というか建設費は相場と比べると決して安くなく、むしろそこで利ザヤを稼ぎつつ、強気の賃料を提示していたということもあるようです。

CMをしていれば、安心?

 ベッキーさんを起用したCMなどで入居者を集め、地方から出てきて困っている女性に、家具家電付きの女性専用シェアハウスで暮らしましょうという提案。投資家の中には「あれだけCMを流しているなら、マスコミも評価しているのだろう」と安心した人もいたようです。
 ただ、CMを流す基準は、「ビジネスモデルが正しいから」とか「マスコミがその会社を評価しているから」ではありません。お金を払えば、広告表現の審査はあるものの、反社会勢力でなければCMは打てます。タレントだってお金を払えば出てくれるものです。

「収益率が高い」という魅力で
オーナーが集まる

 これならば新築でも高利回りが期待できるとサラリーマンを中心に地主ではない投資家がかなり集まっていました。うーん、彼らを「被害者」と呼ぶ前に、このスキームは高利回りで「うまく行く」と購入した投資家は判断したわけです。「サブリースだからとりっぱぐれはない」「シェアハウスだから新しい時代の潮流」「入居者の転職斡旋フィーという新しいビジネススキームがあるから、その副収入で空室があっても大丈夫」。これらは「詐欺的セールストーク」という方もいますが、本当にそう信じて売っていた営業マンとそう信じて買った投資家がいたのだと推察されます。
 区分単位ではなく、一棟、二棟と棟単位で売っていました。1億2億という話です。融資条件はサブリース。たとえ空室でも、「入居者の就職あっせんフィーから副収入を獲得するという新ビジネスなので大丈夫」と煽っていました。
 実際はそうした副収入はなく、新築時の建設利益でサブリース賃料をまかなうという自転車操業が続いていたようです。これも「本当にうまく行く」と思っていた営業マンと投資家がいたわけで、「意図的に騙した」かどうかは経営者本人が出てこないとわからないです。

では客観的にみてどうか

 私自身、似たようなシェアハウスに住んだことがあります。相場よりも安い賃料で家具家電がついている。私のように日本中各地で講演をする人間にとっては、ホテル感覚で考えると、「バストイレが共同でも、まあ寝らればいいし、家具家電つきで安い」なら使えるわけです。ただ、実際に住むとなると、深夜トイレに行くのにもいちいち着替えないとまずい。シャワールームの清掃など共用部のルールはどうしても厳しくなります。
 また、リビングなどかない。通常のシェアハウスに比べるとほかの住民との接点はほぼなく、ただ寝るだけの部屋。この件が起きる前から、シェアハウスの専門サイトでは「これはシェアハウスではない」と掲載していませんでした。

今回の件で
サブリースはダメなのか

 サブリースそのものは、空室リスクの低減には有効です。一棟で勝負する場合は、その棟そのものの空室リスクを当然背負います。サブリース会社は複数の物件を抱えることで、全体のリスクを平準化し、その分10%などのマージンを獲得することで成立しているビジネスです。「新築のうまみのある時期のサブリースはそのまま10%の粗利がとれるから濡れ手に粟だろう」という批評家もいますが、全国を回っているとサブリースであっても元本割れしている物件もあります。投資家個人がそれを背負うよりもリスク分散のひとつの手段としては有効な打ち手ともいえます。
 一方で、満室の自信があればサブリースなどしないほうが利益は高くなりますが、それでは銀行が融資しないという事も多々あります。サブリース問題は金融機関側にも、「元本回収が可能か」「破たんリスクが少ないか」という判断材料のひとつになっているのですが、私は銀行側ももっとビジネススキームの正しさや満室戦略の正しさを判断すべきだと常に思っています。だって工場の設備投資の融資などではそうしたことは行うわけですから。
 ともあれ、本件を一例として「だからサブリースは危険」というのは「サブリースなら安心」というのと同義であり、やはりステレオタイプ的であると思います。

今回の件で、「シェアハウス」は
ダメなのか

 「だからシェアハウスは全部だめ」という論調も、よくないと思います。
 住まいをシェアすることで、住人どおしの絆を深め、とても豊かな住環境を提供している素晴らしい物件は山ほどあります。世界全体は「シェア」という概念が浸透しつつあり、カーシェアやシェアリングエコノミーなど様々な新しい世界が広がっています。
 「シェアハウスだから大丈夫」と「シェアハウスは投資リスクが高い」は同じようにステレオタイプな発想です。良いシェアハウス、悪いシェアハウスが存在し、本件だけで断定的に語ることはよくないのだと思います。

 次号では、かぼちゃの馬車のビジネススキームのKPIについて論じたいと思います。