関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.73

2017.11.08

凶悪事件発生。
物件の資産価値をいかにして守るべきか。

2017年10月、神奈川県座間市のアパートで切断された9人の遺体が見つかった事件。この前代未聞の凶悪事件で、物件の資産価値は落ち、大家さんは大変なことになっているのではないでしょうか。防ぎようがない不動産経営でのこうしたリスクについて、今回は考えてみたいと思います。

写真はイメージです

売りに出されていた、アパート

 事件が発覚したその日に、SNSなどでこの物件が売りに出されていることがわかりました。「へえー、もう売りに出されているよ」「特記事項ありって書いてあるよー」と話題になりました。
私は、「早くも売りに出ているのか」ぐらいに、こうした話題を眺めていました。「こんな凶悪事件が起こってしまって、家賃は大幅に下落して、売りに出したくもなるんだろうけど、売れないだろうなー」と思っていました。

大島〇るの事故物件投稿

 その後、この事件が起こったのは2階の部屋だが、実は1階でもなにかがあった物件であること。こんな事件が起こって退去しようかと考えている人の話。家賃は2万円台と相場より破格の家賃であることなどがネット上で話題となります。いわゆる「大島て〇」という事故物件サイトで、炎マークがついているというわけです。
 「やっぱりいわくつきの物件だ」というようなコメントがネット上で踊っていました。
 私から見ると「とすると、既に入居者は、だれかが同じ建物で亡くなっていてもあまり気にせず、家賃の安い物件に惹かれて入居されているのではないか」といったことが推察されました。

近隣の人が住み続けたいと言っているというネット記事

 続いて流れたのは、投資用の物件サイトで、当該物件の入居者が「出ていかないといけないのか。住み続けたいと言っている」という記事でした。これまたネット上のもので、ほかの記事同様に出所ははっきりしません。「ネットのコメントでは不動産会社のやらせ記事じゃないか」「住み続けたいとか言わないと思う」「だからなんだ」と、炎上まではいかないものの、主観的なコメントが書き込まれていました。

専門紙による取材記事で判明

 昨今では、こうしたネット上の「裏付けのない記事」を頼りに、独自取材も行っていないタレントコメンテーターが発言し、それをまたネットが追随するようなところがあります。私と同業のコンサルタントたちも、この機会にマスコミ等から問い合わせを受けると、「一般論として、どうだこうだ」とか、「民法改正で、損害賠償の請求にも限度があるやなしや」と語っています。本来は憶測や主観だけで語ることは危険なのですが、情報が実は少なく、お茶の間のテレビはずっと同じ内容を繰り返しています。
 ところが、さすが専門紙。賃貸住宅新聞社は、この短期間のうちに当該物件の管理会社に取材を行い、新聞1面に記事を載せました。
さすが、賃貸住宅新聞です。
・今回の殺人事件で売りに出たという情報
→間違い。事件の前から売りに出ていた
・前にもなにかあった物件であるという情報
→正しい。だからこそ、家賃が安かった
・住んでいる人が出たがっている情報
と、
住んでいる人が住み続けたいと言っている情報
のどっちがほんと?
→元々、心理的瑕疵ありで、事故物件と知って安く住んでいる人がいる前提。となると、もしかすると「出たくない」は本音かもしれません。格安ですし。
ただし、未曾有の今回の事件をどう感じるかは、わかりません。さすがに「退去しよう」と思う人もいる可能性はあり、両方なのかもしれません。

大家さんはどうすればよかったのか

 1Fで入居者が病死し、この物件は3年前に心理的瑕疵物件となっていました。孤独死だったのかもしれません。
 大家さんは入居者の病死をすべて防ぐことはできません。仮に若い方の自殺などであれば青天の霹靂であったのかもしれません。
 そこで、家賃を下げてなんとか入れた。相場の半額ぐらいとすれば、大家さんの収支は合いません。なんとか「買ってくれる人はいないかな」と売り広告を出しながら、入居審査は緩めにして、「それでもかまわない」という人を入れていた。そんな中に当該の犯罪者がいたのでしょう。前科があったりしましたが、親は近くに住んでおり、滞納のリスクはなく、気にせず住むという。そして3か月でこの凶行。まさに大家さんとしてはたまらない状況にあったものと推察されます。

賃料を下げ、入居審査を甘くする際のリスクヘッジ

 私自身、ジャーナリストではなく、大家さんに取材はしていないので、正確な情報ではありません。しかし、被害者の特定に時間がかかっている事から、おそらくこの物件には防犯カメラやTVモニタインタフォンなど、証拠の残るものはなかったのではないかと思われます。
 仮に、そういったものがあれば「犯罪発生の抑止」の効果はもしかするとあったのかもしれません。「エントランスや階段に防犯カメラがあって映るな」とか・・・。もちろん、「いつか見つかっちゃってもいいや」的な自暴自棄な要素もあり、完全な抑止効果はなかったのかもしれません。しかし、仮に、最初の病死の発生でオーナーが自暴自棄になって、物件を売りに出すほど追い詰められていたとすると、そうした防衛投資は思いつかなかったのかもしれません。

自らの物件を自ら守る

 入居者の死亡保険や孤独死保険・火災保険、防犯カメラ、あるいは一括借り上げなど、様々なリスクヘッジ策は投資を伴います。
ともすれば、そうした投資をせず、「なるべく出費を減らせば利益が増える」「自主管理にすれば儲かる」「わたしはこうして儲かった」という大家さんもいらっしゃいます。確かにそうなのですが、「それは運が良かった」だけかもしれません。事前に打ち手を講じることでリスクは軽減できたのかもしれないのです。
そして最初の病死の際に「運が悪かった」と考え、嘆くよりも「さらに運の悪いこともあり得る」とリスクヘッジを考えられるか。ここはとても難しいと思います。しかし、そのタイミングでも分かれ道はいくつかあったのでしょう。
 私たちは、こうした事件から学び、学習する必要があります。自分だったらどうするのか。正解はないのかもしれませんが、この機会にゆっくり考えましょう。