関西の大家業をもっと楽しくする
ヒント集
vol.72
2017.10.23
IoTがキーワード。
これからの物件の競争力を考える
それ以前は、「バストイレ一緒・畳・DK間取り・ミニキッチン」など昭和の仕様から、「バストイレ別・フローリング・LDK間取り・システムキッチン」と平成の標準仕様に劇的に変化をしています。
とすると、ここ20年はさほど設備仕様に差がありませんでした。
そんな賃貸業界に大きな変化が来ています。
写真はイメージです
ネット無料物件が増大
まずこれまでと大きく異なるのが、ネット無料物件の増加です。福岡では既に賃貸物件の25%がネット無料となりました。新築賃貸では80%がネット無料。すごい数字です。
福岡は新しい取り組みに積極的であり、かつ空室が多いこともあり、設備強化が積極的。ということは、福岡での変化が全国に広がる可能性があります。全国で講演していると、確かに、青森でも長野でもこの比率は上がっています。空室に困っているエリアのほうが都心よりも先にネット無料への転換を行っています。
となれば、かつて「バストイレ一緒が当たり前」の世界が「バストイレ別が普通」へと劇的に変わったように、一気に浸透すると思われます。
利回り悪化をどう回避するか
しかしネット無料にするということは、基本的に大家側が月々ネット代負担をするため、ランニングコストがかかります。これがわかりやすく利回りの悪化を招きます。おそらく、投資用ワンルーム物件の新築などが、ネット無料対応が一番遅れます。新築の投資用ワンルームでは、税金払うと手残りがない、というケースもあり、この対応に遅れます。となればお部屋選びで劣位になるリスクがあります。
これを回避するためには、「ほかのランニングコストの商材で、トータルの経費を抑える」という工夫が進むと思います。
例えば「ネット無料」かつ「新電力で電気代も5%安くなる」といった組み合わせです。電気代の場合は、オーナー側にもコスト削減効果があり、ランニングコスト軽減につながります。あるいは、「固定電話をやめる」「同軸ケーブルを外して光テレビにする」などで建築費を下げる事も可能です。光回線があれば、固定電話もテレビ放送も乗せることが出来るのです。
無料のネット回線の上に
なにが乗るのか
さて、「ネット無料が増えました」が、このネットの上になにが乗るのでしょう。ここにこれからの収益物件オーナーがライバルと差をつけるヒントがあります。
シンプルには「旧作見放題」といったビデオオンデマンド提供を開始している物件もあります。また防犯カメラをネットワーク対応させて、スマホで大家や管理会社が物件の状況確認が出来るようなものも出てきました。
しかし、せっかくネット回線が入っているのです。これを利用して「近隣のほかの物件にはない付加価値をつける」事が真剣に検討されています。
こうした世界が「IoT」です。
最寄り駅から
風呂にお湯を入れ、エアコンを起動
ネット回線が実装されているのですから、入居者が帰宅前に最寄り駅についたぐらいで、「風呂に水を入れてお湯を沸かしておく」「部屋に冷房を入れてキンキンに冷やしておく」という指示がネットワークで可能です。スマホの専用アプリでスイッチオンにすれば、宅内のネット回線を通じて家電に命令が伝わるのです。
「出張中にも夜になったらカーテンの開け閉めをしておいてね」「今日は暑いからペットのために冷房入れて」「海外出張だから、ブレーカーも落として」「留守番をしている子供の様子をスマホに映して」・・・これらは、もう可能なのです。となれば、おそらく「そういう物件だから家賃が同じでも満室」とか「内見したら、選ばれる」といった競争性に影響するはずです。
そうなのです。「今、ネット無料にするかどうか」という目の前の話から「これが普及した先は、ネットの上にどんなIoTサービスを乗せられるか」が勝負になるでしょう。
新しいターゲットとして
「高齢者」「外国人」向けIoT
今後、人口が減ることは違いありませんが、増えてくるターゲットが一方であります。
例えば高齢者。若い人は減っても高齢者は増える。彼らに入居してもらえれば満室経営につながります。しかし、孤独死は物件の資産価値を悪化させるリスクがあります。
そこでIoTです。
部屋にネット回線が来ているのですから、ここに人感センサーなどをつけ、動かなくなったり定期的な反応がなくなったりすれば、メールなどで、家族や管理会社に連絡が入る。命が救えれば素晴らしいことですし、それがかなわなくても、救急車で病院まで運ぶことが出来れば、物件内でお亡くなりになったというリスクは回避が可能です。
インバウンドも増加しています。旅行者や外国人。彼らはネットで本国とやりとりをします。民泊をするのであれば、パスポート写真と顔認証との照合なども有効でしょう。ネット回線でつながっているので、翻訳や無人チェックイン、あるいは電子解除キーなどの対応も可能です。
高齢者や障がい者がパソコンで病院とやりとりをする仕組みも可能です。パソコンを使えなくとも、訪問看護や地域医療センターと画面で、直接話してやりとりする事も可能です。
IoTの未来は、わくわくする世界です。すぐそこまで迫ってる未来を、次の物件の強化ポイントと考えて、今から学習・研究していきましょう。