TOP満室経営のツボvol.71

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ヒント集

vol.71

2017.10.13

潮目の変化。
新築賃貸着工件数2か月減少をどう見るか。

2017年8月31日。国交省が発表した新築住宅着工件数推移によると、貸家が6月・7月と2か月連続で減少しました。前年同月比では3万6365戸と3.7%の減少。それまでは7か月連続前年比アップでしたから、新築着工の勢いが落ちています。これをどう読むのかを今回は解説します。

写真はイメージです

原因は金融機関の貸控え?

 マイナス金利で「とにかく貸したい。貸したい」と融資先を探していた金融機関の姿勢に変化が出ています。社会的に新築賃貸の建設が「建てすぎなのではないか?」「サブリースで建てたものの空室になって家賃を下げる話になり社会問題になっている」「貸し出しの審査が甘いのではないか」「建設したい不動産会社と金融機関が組んで、無理な融資をしているのではないか」といった社会批判が高まっているのです。
 監督官庁である金融庁も、融資条件をしっかりとみて、厳しい審査をするようにという指導が入ってきているのです。建築着工件数はまさに着工ベース。融資判断はそれよりも前ですから、いよいよ指導の影響が出てきた。すなわち、今後もこの傾向が続くことが予測されます。

頭金なしのフルローンが組みにくい

 特に、「土地がない」という状況で、「土地購入と建物建設をセットで」「その資金がすべてフルローン」というのは、満額での融資がつかなくなっているようです。こう聞くと、きわめて「まっとう」ともいえます。持っている土地の活用ではなく、土地も建物もという事ですから、投資としてのリスクは大きいのは当たり前です。
 そういう意味では、昨年までの状況が異常であったともいえます。ある程度自己資金が必要となるのは、利回りや空室リスクを考えても当然のことかもしれません。

サブリースが融資の条件に。
中古物件購入でもサブリース

 誤解してはいけないのは、金融機関を「貸したい」ばかりで「破たんさせてあとで土地家屋を分捕ろう」などという意図はありません。あくまでその投資が焦げ付かずに、きちんと運用されて、返済されることを望んでいます。
 そうした意味で、返済の滞りにくい「サブリース」は金融機関においても融資条件として吟味しているところがあります。空室リスクが少なく、返済がしっかりするだろうという見てです。
 こうした傾向から、「建築したハウスメーカーが借り上げで、関連会社の管理会社が資産維持に努める」というスキームの新築のサブリースだけでなく「中古物件を買い取る際にも、サブリース会社が空室保証を行い、リフォームやネット無料などの施策を実施して借り上げる」といったビジネススキームも活況です。それだけ金融機関には安心なのでしょう。

家賃が下がるというリスクを
金融機関もAIで試算する

 サブリースの場合は、空室リスクがなくなりますが、家賃が変動するところがリスクです。「絶対に儲かる」という投資は世の中にはないものであり、「空室でも当社が借り上げている」とリスク回避はされているように見えても「でも家賃は見直すことがある」と書いてあるものです。
 初めて不動産投資をするオーナーはこれに気付かない、あるいはあまりリスクとしてとらえていないケースもありますが、金融機関は違います。サブリースでの支払いが返答すれば、借金をした大家さんの返済力に影響することはすでに学習済みです。となれば、彼らは「これからこのエリアで人口が減り、物件供給が増える」から「この返済計画の中で、家賃収入が下がるリスクがある」と知っています。今では、それをAIで計算しているそうです。「人口減少」「供給過剰」をAIがどう計算するのでしょう? 詳細は分かりませんが、実は「すでに築10年の物件で何パーセント家賃が下がった」「築20年ではどうか」という実態のデータは持っています。
 おそらくはこのデータをもとにするだけでも「新築時のこの賃料はいずれこう下がるはずだから、返済計画がギリギリだとこのあたりで破たんリスクになる」ので「頭金を入れて融資総額を抑えなさい」と論理的に計算しているのでしょう。
 こう考えると「これまでの融資がフルでしてくれて得だった」というより「先々返済に無理があった」と考えたほうが良かったとも考えられます。

融資が厳しくなると
これから新築は激減するのか

 では、融資条件が厳しくなると、新築建設が激減するでしょうか。そうでもないはずです。これまでの高水準が少し下がっただけであり、依然としてハウスメーカーは攻勢です。特に自分で土地を持っているというケースでは利回りもよく、現物資産である土地が担保となっています。
 さらに消費税の増税が控えています。(選挙次第でもありますが)。いずれ消費税が上がるなら、その前に建設やリフォームをしたほうが安く済みます。今は低金利で相変わらずレバレッジも効きますので、「建てたい」という意欲は今後も堅調でしょう。

既存物件への影響は?

 むしろ、新築着工件数が少なくなってきていることは、既存の今所有している物件のライバル数が少し減るという事。既存マーケットには好材料でもあります。金融機関の融資条件が厳しく高利回りを意識することで、新築の家賃設定がやけに強気になっていると感じます。となれば築浅の物件であれば、新築の家賃が高すぎるため、空室が埋まりやすい、という事も起こっています。

融資を受けて出来る投資。

 考えてみれば、不動産の収益物件の投資は不思議な世界です。
 例えば、私が「株式で運用したいからお金を貸して」と言って、融資を受けられるでしょうか? 投資信託ではどうでしょうか? 
 「パチンコで勝ってくるからお金貸して」「競馬で勝つからお金貸して」「宝くじ当てるからお金貸して」といっても、日常生活でも貸さないはずです。しかし不動産投資だけは違います。

 それだけに金融機関の融資の意向は、これからの収益物件投資の活況性に影響するでしょう。しかし、今までが異常で、少し戻ったところ。ではどう考えるか。教科書的には「売り時」ですが、それを買う人がいるのも事実。これまでどおり「将来の空室リスクの少ない立地条件に注意して」「安定した投資」をすることが大切でしょう。