関西の大家業をもっと楽しくする
ヒント集
vol.66
2017.07.18
その対策は、次の次の募集でも有効か②。
時代を読むべきポイントと、普遍的なポイント。
今回は、リフォームは設備投資をする際にも「次の次の募集でも有効かを見極めるべき」という点について論じます。
写真はイメージです
設備投資やリフォームの有効性
空室対策の施策のうちで設備投資することはとてもよい施策です。
現在、入居希望者はお部屋探しをする際には、スマホでの検索が主軸。スマホで住みたい街を検索すると、何千・何万と空室が検索されますので、その中から「絞り込み」を行ないます。
とすると「バストイレ別」「エアコン付き」「温水洗浄便座付き」といった項目はよく検索される項目です。郊外ならばここに「駐車場付き」でしょう。ならばこれらに投資をする事は検索にひっかかりやすくなり、決まりやすくなります。
ただし、バストイレ別にしただけでは、もはや9割ぐらいの物件はバストイレ別ですから「普通になった」だけ。「バストイレ別」+「エアコン付き」+「温水洗浄便座付き」でも4割~6割の物件がこの3つは付いているのですから、「それだけで埋まる」と考えるよりは「当たり前度が上がっただけ」と考えるとよいでしょう。
一番安い商品が一番よいのか?
ではこうした設備強化の際には「そうはいっても出来るだけ安い商品」が良いと思われる収益物件オーナーが多いと思います。はたしてそうでしょうか?
たとえば、とあるキッチンは5万円だが5年でボロボロになる。ちょっとグレードがよいものは10万円するけど、10年持つ品質。ではどちらが投資が安いかというと実は後者。工事費が10年で2倍違うからです。つまり「耐用年数」と「工事費」は、投資を考える上で重要なのです。
例えば、防水シートは10年ぐらいで交換時期が来ます。雨風や太陽光により10年で劣化し、穴があくと、コンクリート内に水が漏れ、鉄筋が錆びると膨張し、コンクリートは爆裂します。しかし、値段は1.5倍ぐらい高いけれど30年持つ防水シートがある。とすれば、長期で見れば後者のほうがお得であるというわけです。エアコンもキッチン等も同様です。
流行に左右されるリスク
耐用年数以外に気を付けるべきは、流行です。「今年の流行の色」「はやりの色」が次の次の募集でも有効かはわかりません。例えば、キッチンの色を奇抜な赤にしたり、風呂を部屋から見えるガラス張りにしたりという設備投資は、とても個性的で、目立つかもしれませんが、今回の募集ではたまたま上手く行ったとしても、次の次の募集ではトレンドから外れてしまうかもしれません。
私は壁紙をアクセントクロスにして個性的にするのはとてもよいと思っていますが、それは低コストであり、次の募集でも原状回復で貼り替えるからなのです。水周りの設備の色などを奇抜なものにするのは、次の次を考えるとリスキーな選択だと思っています。
投資の大きい、住宅設備機器の色や形状については、流行に左右されない、飽きのこないものを選ぶのがコツだと思います。
性能の革新性が高いものは
最先端を選ぶ
たとえば、ネット回線。「安いけど遅い」「速いけど高い」という選択で「安いものを選ぶ」のはどうかと思います。というのは、時代がどんどん大容量のデータ通信になっているからです。家電を外出先からスマホでコントロールするといったIOTも始まり、ますますネットは重要になります。このコラムでも述べていますが、ものすごい勢いで、ネット無料物件が増えており、空室対策にはとても有効な施策でしょう。この際、「安いけど遅い」「速いけど高い」の選択を全国の収益物件投資家は迷っているタイミングだと思います。
テレビの同軸ケーブルやLANケーブルを使うタイプのものは、どうしても遅くなります。線が細いからです。となると「ネットが遅い」という苦情が入るだけでなく、2020年の4K放送などが始まると「遅くてTVも見にくいよ」なんてことになるかもしれません。これは、退去理由になるかもしれません。
たった3年後、ネットはどんどん高速化するので、速いものを導入すべきでしょう。防犯カメラも高性能なほうが、やや高くても、チカンや覗きなどの犯人が捕まりやすく、再犯防止出来ますから、これらは高スペックなものがよいと思います。逆に、キッチンやエアコンには「速い遅い」はありませんから、前述した耐用年数は重視しますが、それ以外の性能は目をつぶって投資を抑えるべきだと思います。
安く買って、高く売る投資家は?
収益物件オーナーの中には、一棟ものの賃貸物件を、安く買って高く売っている人がいます。
「安く買う」物件の多くは築古で空室が多くて困っているから売る事が考えられます。もちろん他のケースもあり、その場合は、それこそ掘り出し物か、高値で売りに出るというわけですが、ここの目利きが出来る方が、上手く買います。そして、設備やリフォームなどを施して、満室にして高く売る。こうしたプレイヤーがいるのです。
上手い事やっていますね。とはいえ、買う側が長期で収益を回そうと考えているのに対して、こうした売り手は短期で売り抜けようと考えるので、投資の志向が異なります。
対処療法で満室にした物件は
トランプのババ
気を付けるべき投資家は、設備やリフォームをせず、AD料・フリーレント・家賃下げなどで満室にして「高く売り」抜けようとする人です。
これはいけませんね。
こうした方から買ってしまうと、トランプでいう、ババです。買ってから、退去が増えたりして収益は悪化。次の入居募集にも四苦八苦します。なにしろ前回このコラムで述べた対処療法ですから。
きちんと収支内容や、各月の家賃の振込状況などを確認して、対処療法で一見、利回りがよさそうに見せているだけではないかと、慎重に考えるべきだと思います。
奇をてらった施策は
次回も有効だろうか?
こうした投資家さんよりはましですが、奇抜なデザインの住宅設備やエントランスなどの共用部を良くして満室にしているケース。このケースでは、「次回の募集でもそれで大丈夫かな」と長期的に稼働が良いかを考えるべきでしょう。
壁紙の色は貼り替えればいいですし、照明ぐらいなら付け変えればいいのですが、「ショッキングピンクのキッチン」「黒いトイレ」「丸見えの風呂場」などだと、次回の募集での苦戦が気になります。トランプのババとまではいいませんが、ちょっと癖のあるカード。表面の利回りだけを見ずに、上手に物件を買うようにしましょう。
と、考えると、むしろ自ら「築古の課題物件」を買って、「なんらかの投資も含めて、試しながら空室を埋めて、その結果、儲けて行く」というのが、楽しいのかもしれません。