TOP満室経営のツボvol.65

関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.65

2017.07.05

その対策は、次の次の募集でも有効か①。
家賃値引き・AD料・フリーレントは対処療法。

7月。今、決まっていない部屋はこのままだと長期空室のリスクがあります。
様々な空室対策がある中で、
「どうにかしていれる」という発想の時の注意点を今回は解説します。

写真はイメージです

シーズン過ぎて空いている不安

 7月に空いている部屋は、このままだと9月の転勤シーズンを逃すと、次の3月まで決まらないかもしれません。
 「まあ、イマドキ満室は難しい。一部屋ぐらいの空きはむしろ健全」という考え方もあるかもしれませんが、空室はすなわち利益損。一部屋決まれば、ほぼ純粋にその賃料分ぐらいの利益が上積みされます。こうした積み重ねが年間を通じると大きく、分かっているオーナーほど、「なんとかしたい」という気持ちで焦りが出ます。

AD料を積んで、フリーレントつけて、
家賃を下げて・・・

 焦りが出ると、短期的に効果が出やすい手法をとりがちです。周辺より家賃を下げれば決まるだろう、という発想は実は全体の収益悪化を招きますが、商戦期ではない時期に動く人を獲得するには手っ取り早い方法です。
 広告料といわれるAD料を何カ月も出せば、仲介会社がその気になってくれるかもしれません。しかも、成功報酬。実際には宅建業法でも違法な方法でありがながら、「それで決まるなら」と出してしまう方もいるでしょう。
 さらにフリーレント。「どうせ空いているのなら」という発想で、1カ月2カ月家賃サービスをして、入居者を増やすと言う手法です。
 仮に家賃5万円の物件で、家賃を1万円下げ、AD料を3カ月積み、フリーレント2カ月つけたら・・・。1万円の家賃減額×12カ月で、年間12万円の収益損。4万円×3カ月で12万円のAD料出費。かつ、元の5万円の家賃で2カ月無料と考えれば、フリーレントで10万円の機会損失。
 合計34万円の利益損となります。
 だったら、34万円かけて、リフォームしたほうがよかったのかもしれません。どうせ原状回復費用がかかるのですから、かなりのリフォームが可能です。

それでも、対処療法はやめられない

 「運動をして、食事制限すればやせられる」とわかっていても、ついつい「ダイエットサプリ」に頼ってしまう。
 「ゆっくり寝ていれば治る風邪」とわかっていても、ついつい「先生、注射でもして一発で治してください」と病院で言ってしまう。
 こうした短期的に即効性がありそうな対応は、「対処療法」といいます。スピード優先でとる対応としてはだれしも考えるものです。
 また、「リフォームしても決まらなかったら、損するだけ」と短期的なリスクを考えるケースでもとってしまう手法です。「運動して食事制限までしてやせなかったら損」なのでサプリ、「ぐっすり寝ていても、もしかしたら治らないかもしれない」から注射して、という発想です。私も日常生活ではそんな選択をしがちな気もします。

では、次の募集ではどうでしょう?

 さあ、なんとか「家賃減額・AD上乗せ・フリーレント付き」で埋まったとして、「この物件の次の募集」ではどうでしょう?
 よくあるケースでは、「次も同じ事をする」というパターンです。
 かりに気のきいたリフォームであれば、次の募集でもそのまま借り手が付きやすくなっているかもしれません。しかし、対処療法は、あくまで対処療法なので物件の価値は変わっておらず、繰り返しその手法をとるしかなくなります。まさに短期的に対処する注射のようなもので、やめられなくなります。

募集対象も同義

 たとえば築年が古く、とてもリフォームしても決まるとは思えない、という物件を、なんとか生活保護の方を入れて埋めるというケースもお聞きします。生活保護者も増えており、社会的要請もあり、そうした社会的弱者のための住まい確保を推進する事は必ずしも悪い事ではないでしょう。
 しかし、単に対処療法で、「決まらないから、誰でも入れちゃえ」と理念や意義もなく始めると、やめられなくなります。気がつくと、生活保護だらけの物件で、ほかの入居者も住み心地が悪くなり、コミュニティも悪化。ゴミのルールやエントランスでのマナーなども守られなくなり、夜、奇声を発する人も現れる。賃貸物件は、収益だけのための物件ではなく、地域づくり街づくりの一環でもあります。人が集まる魅力をどんどんオーナー自ら下げて行く事は、決して良い事ではないのです。

安易な対処療法に
我慢して頼らないために

 昨今は、人口も減りライバル物件も増え、賃貸業界も楽ではなくなりました。こうした環境下では、なんとか埋めたいと目先の手法に頼る傾向もあり、結果的にマーケット全体が家賃下落・AD暴騰・フリーレント流行で収益性を悪化させています。
 こうした手法ばかりに頼らず、知恵を絞って、周辺物件も「ちょっとここがいい」という魅力づくりを考えてみましょう。その方が長期的には収益性が改善し、住まいもよくなり、資産価値も向上するのではないでしょうか?