関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.62

2017.05.22

今の入居者と
未来の入居者の像を考える

前回、賃貸経営の理念があるとよいというトーンで
書かさせて頂きました。
そのヒントが「今の入居者はどんな人ですか?」という観点です。
ここを突き詰めると、人口が減っても「どんな人に住んで欲しい物件にしていくのか」
と今後の賃貸物件の経営方針を立てやすくなるのではないかと思います。

写真はイメージです

「収益」物件なのに、
「どんな入居者」かがなぜ大切か

 前号でも述べましたように、賃貸経営を単なる「投機」ではなく、「経営」と考えると、3C4Pなど経営の視点は必要となります。となれば収益物件のオーナーは買った瞬間から「お客様」ではなく「経営者」となります。お客様は「入居者・入居希望者」であり、競合は「近隣のライバル物件」です。
 そう考えると、「どんなお客様か」は重要です。例えば、ベンツとトヨタとダイハツでは当然ターゲットカスタマーが異なり、戦略も変わってくるものです。

学生向けの物件だったけど・・・

 先日、ご相談を受けた大家さんは、とある大学の目の前の地主さん。かつてはこの大学に通う学生さんのお部屋として賃貸経営し、満室稼働でした。ところが時代は変わり、自宅からの通学者が激増します。大家さんは困り、仲介会社のアドバイスで家賃を下げ、入居者は社会人の単身にガラリと変わりました。
 さて、家賃がどんどん下がり、地方大学のキャンパスに近く、交通の便が良くない物件にどんな単身者が住んだのでしょう。
 入居者を選べる状況ではありませんでした。
 気がつくと生活保護者や高齢者などばかりになりました。
 この物件は、自主管理でしたので、仲介会社は仲介専業の会社に頼みました。とにかく入れるまでが仕事の仲介会社。さらに入居者の質は下がります。
 夜、奇声を発する人や徘徊をする人等、入居者の質の低下は否めない状況でした。

コスト優位で勝負を続けるなら

 不動産ですから、売らない限りは立地を変えることは出来ません。入居者の質が下がってしまい「売ろうかしら?」と考えても、なかなか売れる物件ではありません。
 立地が厳しくとも、家賃を下げれば入居者は確保できるかもしれません。
 ここで「下げて入れるか」「維持して耐えるか」の選択肢はありましたが、マーケット環境は後者を選ぶには困難でした。
 となると、家賃を下げる事で入居者の生活水準も下がる可能性はあります。
 それでも、「生活保護の人も高齢者も、あるいは精神に疾患のある人も住む所を確保してあげたい」と理念があれば、軸は明確です。そうした戦略もありだと思いますし、社会は求めています。
 しかし、そういう理念があったわけではなく、「気がつくと入居者の質が下がってしまった」というケースでした。大家さんは頭を抱えていました。
 このまま、「今の入居者に対応しよう」と考えるのであれば、防犯カメラやセキュリティ対策を強化したり、高齢者の見守りサービス等の対応をしたりする事も可能です。今のお客様に喜ばれるサービスを軸にして、経営方針を修正するというわけです。

未来の入居者を考える

 しかし、意図せず、今の入居者の質が下がってしまったと嘆くとしたら、軌道修正も考えましょう。大家さんはそれを望んでいらっしゃいました。
 家賃はそう簡単には上げられませんが、入居者は選べます。たとえばシングルマザーや外国人にシフトして行くと考える事も出来るでしょう。仮に、現在、入居差別されている母子家庭や留学生を積極的に入居させていくとします。しっかり働いているシングルマザーを応援し、日本で学ぶ学生を応援し、日曜日にはバザーなどを自由に行なってもらう。入居者の笑顔が見えてきます。
 高齢者に特化したり、生活保護に特化したりするのも良いでしょう。
 その方針は経営者として、物件オーナーがすべきです。そしてそのお客様の満足度を高めて、将来も賃貸経営で勝ち残って行く。それが経営者です。

課題があるほど燃える

 私は、オーナー向けのセミナーなどで個別相談を受けるケースが増えています。最初は「どうしたら儲かるか」と投資指南のような質問も受け戸惑いましたが、大家さんが「こうしたい」という経営方針があれば、あとは、全国の事例をご紹介する事が可能だと気が付きました。ビジネスと同じであり、「どんなお客様に、なにを魅力に」入居してほしいかに尽きるのです。
 そういう意味で、先日の相談会では、課題が多く、すぐに解決策が思い浮かばないというケースもありました。でも、だからこそ燃えるものです。
 もし課題がなければ、買った瞬間、あるいは建てた瞬間に利回りは確定し、勝てる馬券を買うだけの勝負です。しかし、課題があればあるほど、ではどうすべきかを考えて、知恵を出し、その結果満室となれば収益が増える。つまり「儲かるか儲からないか」ではなく「どんな人に、どんな工夫で訴えて入居して頂くか」というビジネスの勝負をしているという事です。
 「絶対儲かる」「秘密の投資術」「必勝法」などビジネス同様ないのかもしれません。
 世の中には、上手いラーメン屋もあれば不味いラーメン屋もあります。高いラーメン屋もあれば安いラーメン屋もあります。そこに「絶対儲かる」「秘密のラーメン道」「必勝法」などあるのかは分かりませんが、工夫と努力の余地があるのが、馬券購入とは違う魅力なのかなと少し思い始めました。
 皆さまの満室経営は、人口減少と物件供給過多で毎年難しくなっています。だからこそ、この賃貸経営を楽しみ、チャレンジして行く姿勢が大切なのではないかと思います。