関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.61

2017.05.08

経営者としての
3Cと4Pの視点。

沢山の大家さんと会っていると、その視界や視座の高さに驚く事があります。
まさに経営者としての力量であり、人格者であり、
著名なビジネスパーソンと話しているように、夢を語り、深い志を持ち、
結果的に入居者から愛され、街を守っているように感じます。
今回は、大家さんが持つべき、経営者の視点について、論じたいと思います。

写真はイメージです

儲かるか
儲からないかの議論

 いくらの物件をどう買えば儲かるのか。経済合理性に従えば、投資対効果の話にすぎません。エアコンをもう一台付ければ儲かるのか。リフォームすれば儲かるのか。シンプルには、埋まるかどうか、家賃を下げずに済むか、あわよくば家賃を上げられないかという話になります。実際に、セミナーなどで大家さんと話すと、そういう話に終始する事は多々あります。なかには質問と称して、ご自身の持論を語って納得される大家さんも多数いらっしゃいます。
 確かに賃貸経営は、ようやく空室が増えて来たからこそ、空室対策をどう展開するかが論点となってきますが、それまでは、要するにいかに買って、いかに儲けるかが論点だったように思います。株式の売買や投機の話に近い概念だと思います。

3Cの視点で考えてみる

 ビジネスの世界もとても似ています。儲からなければ倒産してしまうのがビジネス。きれいごとや理念を語った所で、利益が上がらなければなにもなりません。収益が上がらなければ単なるボランティア。経済成長性の見込めない事業では、経営が成り立たない。
 こうしたオーソドックスなビジネスの世界でもっとも基本とされるのが3C4Pの考え方です。
 3Cとは?Customer(お客さま、顧客、ニーズ)、Compepitor(競合、市場ポジション)、Company(自社、経営資源、ブランド)。自社とお客様とライバル会社との関係である。ライバル会社よりも顧客が喜ぶ商品をいかにして展開するか。基本中の基本といわれる視点です。
 では「収益物件」という点で考えるとどうでしょう? 
 「物件価格が高くて利回りが悪いが、どれを買ったらいい?」「俺は、自主管理が儲かると思うんだよ」「サブリースの話は鵜呑みにしない方がいいかな?」これらは、「私は収益物件を購入するお客様なんだけど」という前提があります。お客様視点では、「どれがお得かな?」という当事者の意見ですが、実は3Cの視点が経営者としての視点です。
 個人事業主として、ビジネスを自営するわけです。
 前の文章を3Cの視点で書きなおしてみましょう。
 「物件価格が高くて利回りが悪いが、どれを買ったらいい?」
 ⇒Customer(お客さま、顧客、ニーズ)では「入居希望者には物件が溢れており、より安い物件やより住み心地がよい物件が選ばれる状況にある」
Compepitor(競合、市場ポジション)では「利回りの良い物件は低金利を背景にスピーディに売れており、価格は総じて高い。サラリーマンの投資家やリートなど多様のプレイヤーが登場している。ハウスメーカーは相続税対策として地主に積極的に賃貸建設を促しており、競合物件は今後もどんどん建つだろう。ライバルは多い」
Company(自社、経営資源、ブランド)では「すでに○棟○戸の物件を持っており、収益は○○円。空室が○戸あるものの黒字。低金利の今こそ、もう○棟に拡大して、毎月○円の収益を稼ぎたい」などとなる。
 となれば、自主管理は利益率拡大のための経費節減策のひとつであり、管理委託は所有物件拡大や手間削減のためのアウトソーシングの話であり、正解も不正解もありません。サブリースは空室による収益悪化へのディフェンス策のひとつにすぎず、一方で地主側だけがリスクゼロでこの環境下でリスク回避出来るはずはなく、家賃見直し条項等は冷静に契約書を読む必要性があるはずとなります。

4Pの概念での差別化

 世の中のビジネスでは、すべて競合が存在します。
 自動車メーカーに例えても、洋服の会社に例えても、あるいはコンビニでも。トヨタと日産とダイハツ等が競い合い、ユニクロとしまむらとアパレルメーカーが闘い、セブンとローソンも熾烈に闘っています。
 当然、収益物件も同義です。近隣の賃貸物件との闘いは今後もより一層激しくなります。「収益」という名前がついているので、なにか株や投資信託のように感じてしまいますが、単純に考えれば、近所の物件に空室があっても自分の物件が満室で賃料が確保できていればよいわけです。マーケット環境はクルマでも服でもコンビニでも人口が減るのは一緒なのですから、より過酷な争いになるのは当然。この闘いに勝つ事が、ビジネスとして当たり前なのです。

競争の中での4P

 すべてビジネスは競争と考えると、その差別化ポイントは、4Pといわれる軸での闘いがベースとなります。
 最近のマーケティング理論では、5Pとかもっといろいろありますが、ベーシックには、4Pです。
 Product(商品・サービス)、Price(価格)、Place(販売方法・販売チャネル)、Promotion(広告宣伝・営業活動)の4つです。
 例えば全国展開している大手ハンバーガーショップと、自然農園で作っているハンバーガー屋さん。
 前者は大量生産のProduct(商品)でマニュアル化されたサービス品質で、Price(価格)は安く、Place(販売チャネル)は駅前、Promotion(広告宣伝)はTVCMです。
 一方後者は、自然素材を使ったProduct(商品)であり、Price(価格)は高く、Place(販売チャネル)は駅から遠いけれどもそれでもいいというお客様を狙い、Promotion(広告宣伝)にはTVCMは使わず、口コミとネットのSNSを活用すると言った具合です。
 賃貸物件に例えれば、Product(商品)は物件の立地や設備、Price(価格)は賃料や初期費用、Place(販売チャネル)は仲介会社、Promotion(広告宣伝)はネットでのPRなどとなるわけです。

ビジネスの勝者は、
儲かるか儲からないかだけの軸
ではない

 このように考えると、安くて手軽なハンバーグと、高いけど自然素材のハンバーグの手法に「良い悪い」は有りません。これは企業戦略なのです。自社のポジショニングをどこに置き、どう企業戦略をとるかの違いです。
 しかし、そこには「理念」があります。「いつでもどこでも手軽にハンバーグを食べてほしい」という理念と「健康で自然な素材で高くても良質なハンバーグを提供したい」という理念には、これも「良いか悪いか」ではなく、明確に違う「軸」があるのです。ホンダにはホンダのフィロソフィーがあり、ソニーにはソニーの理念がある。ソフトバンクの孫社長やユニクロの柳井社長には、企業を成長の導く理念があります。

大家さんとしての理念

 「うちの物件に住む人が、この街を好きになって欲しい」であるとか、「この街の事をあまり知らない単身女性が安心して暮らしていける物件にしたい」とか「母子家庭や高齢者など困っている人を助けてあげたい」とか「住人同士が仲良しで、笑顔で毎日挨拶しあう」といった、大家さんの考え方がしっかりしていると、私も会っていてとも感化されますし、その方の経営観から多くの事を学ばさせて頂く機会となります。そして不思議な事にこうした方々は、収益面でも安定していて、ぶれないのです。
 おそらくは、「やりたい賃貸経営」としての考え方が先にしっかりあるため、そのやりたい事が実現できない収益性の物件はわざわざ買ったりしない事もあるのでしょう。
 私達がお客として、クルマを買ったり服を買ったりコンビニに行ったりする時には、選択する自由があり、知らず知らずに4Pで選んでいます。このクルマはおしゃれだとか、この服は安いだとか、このコンビニは立地がよいだとか。そしてそれらは企業の経営ポリシーがあって、そのポジショニングにあります。
 今、人口が減り賃貸物件の建設が増え、競争が激しくなっています。私はそれは「良い事だ」と思っています。空室が増えた事をきっかけに多くの大家さんが「ではどう闘うか」を本気で考える時代になりました。だからこそ、その闘いの中で、「どういう賃貸経営をするのか」という軸をはっきりして、経営をして行くべきなのだと思います。