関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.59

2017.04.03

1Fテナント物件の
リスクと対策。

空室対策の相談会などを行なっていると、「1Fのテナントがずっと空いたままで・・・」という相談を受けるケースが増えて来ました。
今回は、よくある「1Fがテナント」という収益物件のリスクと対策について
論じます。

写真はイメージです

生活習慣の変化と
マーケットの異変

 私達は小さい頃、近所の文房具屋さんで鉛筆やノートを買い、近所のおもちゃ屋さんで玩具を買いました。洋服屋さん、写真屋さん、クリーニング屋さん等が身近にあり、住宅街でも歩ける範囲で大概の用事を済ます事が出来ました。
 しかし、今や、ある程度の都市には「○○モール」「○○ショッピングセンター」が登場し、自分自身もこうした複合施設を利用している。これは暮らし方や生活スタイルが大きく変わってきたという事なのです。当然、「テナント」という事業用物件についても構造変化が起こっています。

ひとたび空くと
なかなか変えがきかない

 すなわち、「1Fが文房具屋さんで2F以上が居住用という一棟マンション」等が売りに出された場合は、「この1Fが退去した場合、すぐにうまるのだろうか」というリスク判断が必要となっています。なぜなら、日本中で、たばこ屋さんも文房具屋さんも本屋さんも減っているのであり、そう簡単には次の借り手が見つかりにくいのです。
 飲食店やコンビニ等はそれ相応の人通りがなければ商売が成立しにくいものですから、こちらの事情で「空いたから借りて」というのは通用しません。相手も商売をやって生きるか死ぬかの挑戦をするのですから。
 こうした「1Fテナント」の賃貸物件は、それが空いた場合に収益利回りが確保出来ないというケースもあり注意が必要です。

ベテランの職人の自営

 「これまで滞納もない、安心出来る人なんですよ」というケースでも、入居者の仕事と年齢などは気になるところです。「刃物職人でとても評判のよい方なんですよ」「畳屋さんで地域からも慕われていて」「測量か設計の仕事を長年されている方です。飲食店等と違って静かでいいですよ」等と言われた場合には、失礼ながらご年齢を聞くようにしています。
 こうした「手に職」のある方々は高齢者も多く、もし将来「だんだん目も耳も悪くなったので引退しようと思います」と言われると、次にその1Fを同じように借りて頂ける次世代の方がいらっしゃるかどうかは、ちょっと難しいのです。

社会の変化に敏感に

 例え1Fだけでも、事業用の物件を収益物件として扱うには社会の変化をよく勉強する必要があります。
 最近はスマホで写真が撮れてしまい現像する人が減っている為、写真屋さんは減っています。ネットで本も買える時代ですし、音楽もダウンロードする時代。本屋さんやCDショップ、レンタルビデオ店も減少しています。こうした時代の流れを知っておかないと、今、入居され事業されている方が末永く継続可能なのかの判断を誤る事があるでしょう。一棟売りの表面利回りの良い物件を買われた方が、数年して、1Fのテナントが出られて利回りが悪化。もしかして前のオーナーは先々の退去を知っていたのではないか、と感じるケースもありました。
 かつて街にあった商店は、これから減少していくリスクが高く、○○モールなどに人が集まれば、それだけ同じ業種は退去リスクが高いと考えた方がよいでしょう。

空けておくよりは・・・

 「1F店舗がどうしても決まらない」からと、例えば風俗系の店等を入居させてしまうと、とたんに上部の居住用の入居率が悪化するというケースも見てきました。
 とはいえ空けたままでは収益利回りは厳しいですし、1Fが常に人気がないというのは、居住用物件の入居時にも人気が下がります。

コインランドリーが人気だが

 近年、不動産オーナーによるコインランドリー経営が人気であると言われています。そんなに自宅で洗濯をしない人が増えているのかは実はちょっと疑問なのですが、確かに空けておくよりは、コインランドリーにした方が入居者の利便性も高まるのでしよう。機械を置くだけですから、事業としても人件費が抑えられるという事かなと思います。ただ、ビジネスとしての永続性には、私は不安もあります。

もし、空いてしまったら

 立地にもよりますが、ひとたび空いてしまった1Fテナントの空室対策は難しいかもしれません。先にあげたコインランドリー以外にも様々な手法はあります。
(1)1Fも居住用にリフォームする
⇒ただし女性単身などは決まりにくく、リフォームの投資回収が難しいかもしれません
(2)1Fで、大家さんが喫茶店などを営む
⇒単体での収益化は難しいと思いますが、健全な赤字経営を行ない節税しながら、従業員に対する給与として家族に固定給を払われている方もいるようです。
(3)マッサージやネイル等の新ビジネス
⇒臭いなど注意は必要ですが、比較的原状回復費用もローコストで済みます。が継続性は入居テナント次第です
(4)学習塾
⇒全国で増えています。全国各地に展開しているケースは多いと思います。夜間も授業はされますし、親の送り迎え等の駐車違反等はケアが必要です。
(5)駐車場・駐輪場への転用
⇒入居者の利便性は高まります。テナント時ほどの収入は確保できませんが、郊外などでは有効な施策かもしれません。
(6)不動産会社に貸す
⇒店舗を増やしたい不動産会社に格安で貸すというケースも耳にします。人気がないよりましですし、店舗を借りているという信頼感で、他の物件も含めて全力で入居促進をしてくれる事はあります。
などなど。他もあるかとは思います。

空いている1Fを活用した
コミュニケーションの場づくり

 全国でこうした「1Fのテナントが空いていて…」という現象が起こっています。が、この変化をチャンスと捉えて、面白い試みをしている方もいます。
 例えば、なかなか決まらない1Fの空いているレストランを「入居者限定の格安食堂にする」という大胆な手法を展開している方もいます。単身の多い地域であり、入居者はともすれば孤独な存在。そのまま空いていたらただの空室だった空間が、「おっ、○○くん、元気?」と気軽に声をかけてもらえる癒しの場に変えて行く。とても素敵ですよね。
 たとえば、高齢者のデイケアサービスとして格安で貸している大家さんもいらっしゃいます。ペット可物件の1Fをペットショップに格安で貸す。そんな大家さんもいます。
 「どうやってうめて利回りを元に戻そうか」と考えるよりも、「どうせなかなか決まらないなら、この空間で、なにか地域に貢献できないか」と考えるのも良いのではないでしょうか。そのヒントは今、街が失いつつある、人と人との絆。大げさな言葉だとすれば、コミュニケーションのきっかけとなる場、と考えると、よいアイデアに巡り合えるかもしれません。