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ヒント集

vol.58

2017.03.21

相場より家賃の高い新築。
そのままで5年後は勝てるのか?

最近、新築賃貸の空室が決まらないという話を聞きます。
建築費アップ・人件費アップで建築原価が上がり、その分、利回り確保が厳しくなり強気の賃料設定となっている為だと思います。
さて、この新築は「買い」でしょうか?

写真はイメージです

新築プレミアムが終わる?

 これまでは、「新築は人気で建てれば決まる」のが普通でした。ところが、新築に空きが出て、なかなか決まらないという現象が、全国各地で発生しています。特に仲介会社から聞きます。
 なにが起こっているのでしょう?

新築物件の賃料上昇

 アベノミクスを反映して、かつてよりも円安になっています。もちろん為替ですから、日々円高になったり円安になったりはしていますが、数年前に比べれば円安です。自動車メーカーなど輸出する側は有利に働き、景気高揚を狙っています。
 すると、鉄筋や木材など建築資材を輸入に頼っている我が国では、建築コストが上がってしまいます。復興・オリンピックの需要で建築関係は仕事が忙しく、人件費も上がっています。結果的に新築の物件価格が上がり、賃料が上昇しています。
 さらに土地の価格も上がっていますので、一棟売りの新築物件の家賃設定はかなり高くなっています。
 一方で、築古物件の家賃は長期でダウンしていますから、新築と築古の家賃差が激しくなります。これまでですと、新築は人気なので賃料が高くとも決まっていたのですが、差が開き過ぎてなかなか決まらないのです。
 仲介会社からこの声が上がっているのは、建設側は新築をサブリースで建てている為です。大家はサブリースで家賃保証されているので、空いていてもあまり騒がない。建設側は新築がなかなか決まらないという事実をアピールしてもデメリットしかありませんから、仲介側から聞こえてくるのです。

AD料やフリーレント
ゼロゼロで満室に?

 こうした新築物件は、1年空けておいたら「新築」と言えなくなります。未入居のまま完成後一年を経過すると、新築の定義に該当しないのです。
 新築の建設は必ずしもオンシーズンとは限りません。工事を平準化するには、むしろ年がら年中どこかで工事をしておいた方が、労働工数確保が安定します。そこで、新築と呼べる一年間の期間で、なんとかオンシーズンの1~3月に満室にしたい。そして仮に4月になっても決まらないと、AD料を過剰に投資したり、ゼロゼロやフリーレントにしたりして、なんとか満室にしようという力学が働きます。

無理な賃料設定で
次の入居者確保は大丈夫?

 こうして「ちょっと高すぎる賃料」の新築はなんとか満室になりました。しかし、次の更新時に今の入居者が退去した後はどうでしょう?
 例えば、3年後5年後には、当然ですが当該物件は「新築」ではありません。新築プレミアムという幻覚技ももう使えません。
 かつては、築古物件と新築物件には明確な差がありました。
 新築はフローリングで間取りはLDKでバストイレは別でエアコンと温水洗浄便座。畳・DK・ユニットバス・エアコンなし・温水便座なしの築古とは明らかにスペックが違いました。従って、築年を多少経過しても、高めの賃料を維持しやすかったのです。
 ところが今は、今の新築と築5年目の物件に大差がありません。というか築20年以内なら、フローリングで間取りはLDKでバストイレは別でエアコンと温水洗浄便座ではないでしょうか? となると3年後5年後は周辺物件と「大差がない」のです。これだと「家賃が高い理由」がありません。
 これまではサブリース会社も、10年間は家賃据え置きなどの措置を取ってきましたが、昨今は、いきなり次の更新時に下げる交渉が始まっていると聞きます。なぜでしょうか? それは周辺の築5年ぐらいの物件と、あまり違いがない物件を新築で建てているからなのです。

5年10年経っても
希少価値のある物件を

 そんなことにならないように新築で成功するには、先を見る目が必要です。
 例えば、現状のマーケットでは、
「バストイレ別」はほぼ9割、「エアコン」はほぼ8割、「温水洗浄便座」はほぼ5割はついています。このスペックだと、来年には「新築ではなくなり」「どこにでもある物件」となります。すると高めの賃料では闘えません。
 ならば、「ペット可(それもキャットウォークや足洗い場ぐらいついている)」とか「ウォークインクローゼット(で広い)」とか「セキュリティ会社対応(で防犯カメラ付き)」とか「宅配ボックス(しかも大きい)」とか「ハイスペックなネット無料(で旧作見放題)」とか、とにかく周囲の物件よりも「高いなりに魅力的」でなければ厳しくなります。
 その分、どこかでコストを圧縮する必要があります。あまり見えないバルコニーの内側のタイル等、分譲マンションでもメリハリをつけた工夫をしています。設備も大量購入でローコスト化する等、利回りを考えた投資をしています。今や携帯電話が普通ですから、メタル回線を外してしまったり、ネットをつけるので、テレビ用の同軸ケーブルをはずして、光テレビで対応する等、時代に合わせたコスト削減方法を考える必要性もあります。
 金利が安い今、収益物件の投資は資産運用でレバレッジが効きやすく、ミドルリスクミドルリターンが期待できます。とはいえ相場がどうなっていて、未来はどうなるのかをしっかりと想定し、誰かの言いなりにならずに、判断していきましょう。迷ったら未来を考える事です。「わが家にもこんな設備は無いから、もったいない」ではなく、未来を考えて差別化を図りましょう。