TOP満室経営のツボvol.54

関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.54

2017.01.19

退去理由を分析して
入居率改善に役立てましょう。

商戦期を迎え、退去が増えてきます。
賃貸物件は入居者の入れ替わりが激しく、
2~4年ぐらいで退去をすると考えると、
1/4から半数ぐらいは毎年退去があります。
退去者を「顧客資産」と考えると、ここに本来は大きな価値があるはず。
今回は、退去者の退去理由の分析について論じて行きます。

写真はイメージです

どこへ行ってもアンケート。
なぜCS分析が流行っているのか

 レストランに行くと、最近必ずと言っていいほどあるのがアンケート。サービスが良かったのか、料理は美味しかったのかといったアンケートがあり、回答出来るようになっています。
 また、インターネットで宿等を予約すると、後日、「利用してみてどうだったか」といった口コミ情報の記入を促されたりします。こうしたアンケート情報や口コミ情報は、よりよい商品づくりなどに活かされ、サービス強化に繋がっています。また、ポイントサービスや回数券のハンコ等で「次回の利用を促す」という仕組みも定着しつつあり、世は「○○ポイント」のサービス合戦となっています。しかし賃貸業界ではこうしたアンケートが不動産オーナーに届く事は少ないのではないでしょうか?

不動産オーナーが見逃しがちな
退去者の声

 不動産業界でも、「お客様の声を活かしたサービス」というものが出来ないものでしょうか。例えば、退去時に「エレベーターが老朽化していて不安なので退去する事にしました」というような声が、しっかりと聞けていれば、リフォーム対策・空室対策の大きなヒントとなります。
 しかし、ここにはいくつかの障壁があります。
 まずは、我々の業界の分業化による弊害です。「収益物件の投資家(=大家)」「サブリース会社」「管理会社」「仲介会社」と、サービス提供側の分業化が進んでいる事です。
 例えばレストラン業界であれば、「料理がおいしかった」「おいしくなかった」「接客丁寧だった」「雑だった」といった評価がすぐに店に届く事で、誰のどの工程に改善点があるかと業務を磨き、サービスの品質を高る事が出来ます。1人の店長のマネジメントの配下にシェフやウェイターなどのメンバーがいるためです。
 ところが我々の業界ではこれが分業化されています。シェフもウェイターも別の会社で、経営者である大家も別です。昨今、とある携帯販売会社で「親会社に怒られるので、アンケートでは、接客が大変良かったに○をしてください」とアナウンスされていた事が問題となりました。アンケートを配る側とそれを評価する側が別になってしまうと、「隠したい」という本能が働いてしまうのです。
 つまり退去者のアンケートで「管理会社や仲介会社への不満」が露呈してしまうと、「オーナーには報告したくない」という気持ちに駆られる。先ほどの例だと「そんなにエレベーターの老朽化が問題になっていたのに放置していたのか」と大家さんに怒られてしまうので黙っていたい、というような気持ちです。

 もうひとつは、我々の業界があまりリピータブルな業界ではないという点です。レストランのお客様の不満をアンケートにとり改善すると、またそのお客様が来てくれるかもしれない、というリピーター戦略が我々の業界では成立しにくいからです。賃貸マンションを退去する人にアンケートをとって解消しても、同じ人が、またその大家さんの物件を借りてくれるという事はなかなかないという理由です。
 そして3つ目は、顧客の声が、商品選択の動機になりえる程多くとれないという理由です。例えば、宿。沢山のお客様の評価で満足度が高く、口コミの評価が高いと、その宿を予約する人も増えます。毎日、宿に泊まる人は変わり、沢山のカスタマーの声が集まり、ネットなどで宿選択を左右する材料となるためです。
 グルナビや食べログなどのランキング等はまさにこれに当たります。
 ところが賃貸物件は入居期間が長く、沢山の声をネットで集めて、口コミ評価でランキングする事が馴染みにくいものです。
 以上のような理由で、退去時の評価や生声が、オーナー・大家にも、そして次の入居希望者にも届きにくいという傾向があります。

しかし、本当は、
退去理由は宝の山

 とはいえ、昨今の空室増加を鑑みると、実はこれまで見逃されてきた「退去時の声」を拾い上げる事は、重要なポイントとなって来ています。なんとかして声を拾い、それを空室対策に活かして行く必要があります。
 例えば、「駅まで距離がある物件」なのに「駐輪場に屋根がなく雨ざらし」だったので「退去した」というケース。それなら、駐輪場に屋根を付ければその方も退去しなかったでしょうし、長期入居者が増えて空室率を下げる事に成功していたかもしれません。
 あるいは「ネット無料物件だから入居したのに遅すぎて役に立たないので、更新のタイミングで退去した」ということが分かれば、ネット接続会社を変更する事も出来るかもしれませんし、今後の選び方の参考にもなります。
 また、「302号室の人がおかしな行動をして奇声を発して、周囲に嫌がらせをし続けるから退去する」という事が判明し、かつ、そうした人が前後左右上下の部屋で頻発してるとわかれば、リフォーム対策やネット募集をするよりも、この302号室の困った人をなんとかするほうが空室対策に有効であることがわかります。
 しかるに、退去理由は宝の山であり、なんとかここから「空室対策のヒント」をつかむ必要があります。

善良かつ理想的な入居者との
コミュニケーションが少ない

 我々の業界では、これまで問題入居者とはよく会話をしてきました。家賃を滞納したり、無理難題なクレームを言ってきたり、ゴミ屋敷にするような問題入居とは、頻回にコミュニケーションをとっています。
 その一方で、善良で理想的で、問題も起こさず、家賃も滞納せず、とてもいいお客さんであった入居者とはコミュニケーションの回数がほとんどない。長い間家賃をきちんと払い、問題を起こさずに暮らし続けてくれた素晴らしいお客様に、退去時ぐらいは「いかがでしたか?」と聞く事は、次の入居獲得と、現状の入居者の満足度向上と入居期間の継続の為に必要なことでしょう。

退去立会時こそ、チャンス

 ひとつの課題解決は退去立会です。退去時に実際に入居者に会えるタイミングであり、長い間の入居に感謝の気持ちを伝え、感想を聞くのには最適な場であります。アンケート用紙等と違って、生の声も聞きやいタイミングです。
 退去立会は、とはいえ原状回復の重要な場面であり、大家さん=オーナーが直接会って「ここの汚れは弁償して」と言い合うような事は避けたいものです。
 そこで、退去立会が終わった後に、「長い間住んで頂きありがとう」と大家さんから声をかけに行くのはいかがでしょう? もしくは退去立会終了後に不動産会社と入居者が大家さんにお礼に行くというシーンを設定してもらってもよいかもしれません。
 入居中ですと、冒頭のエレベーターの件ですと、直接会う事で「ではいつまでに直すのか」と納期の約束事になってもやっかいですが、退去時であれば、「エレベーターが怖くてねえ」と聞く事で、肌感覚で物件の課題を聞く事が出来ます。

退去者にお礼の手紙を書く

 もうひとつの解決策は、退去が終わった後に、お礼の手紙を書くと言う方法です。転居先を大家さんが知る事は個人情報保護の観点で問題があるかもしれませんので、お手紙を不動産会社に渡してもよいでしょう。(不動産会社側は、退去者と敷金精算や原状回復費用のやり取りなどするため、転居先を知っている事は通例です)
 この際に、「○○ハイツに長く住んで頂きありがとうございました。住まわれてみて、不便だった点や改善したほうがよかった点などあれば、同封のアンケート用紙にお書きください」等と書いてフリーコメント用紙と返信封筒を入れておく事も可能でしょう。
 ここには苦情だけでなく「住んで良かった。魅力に感じた点があれば教えてください」といった長所も書けるようにすると良いでしょう。
 短所ばかり書かれると凹みますし、「駅から距離が遠くて」「物件が古くて」等「変え難いコメント」ばかりでは、物件を磨くと言う目的には使えません。しかし、長所を書いてもらえれば、仲介時のセールストーク等に応用も可能です。
 「物件は古くて、物音がよく聞こえましたが、地元のスーパーが安くて便利でした」「よくあるアパートではありましたが、目の前の桜の花が綺麗で癒されました」「管理人さんが優しい人で大きな荷物を運ぶのを手伝ってくれました」「廊下の窓から花火大会の花火がちらっと見えて嬉しかった」等、大家さんが知らない魅力を知る機会になるかもしれません。これらを知り、その長所を伸ばして行く事は、物件の魅力を高め、入居率を上げて行く事が出来るかもしれません。

退去者の声を上手く活かして、空室対策に役立て、物件を不満に感じての退去者が少ない安定稼働を目指して行きましょう。