関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.53

2017.01.05

収益物件のリノベーション。
ターゲットを設定して長所を伸ばす。

人口減少と物件供給増加に伴い空室が増えてきました。
それに伴い様々な空室対策が今、求められています。
設備強化に加えて、間取り変更などのリフォーム・リノベーション、
あるいはDIYなど
様々な手法が多様化する今、どのような手立てが有効なのでしょうか?
今回は収益物件のリノベーションについて論じさせて頂きます。

写真はイメージです

「リノベをすれば空室が埋まる」
とは限らない

 リノベをしようかと迷っている収益物件の投資家さんに、よく私が問われるのは「リノベをしたら決まるのか」という問いです。中には「政府でもDIYを推進しているらしいので、DIYをすれば空室が埋まるのですか?」と聞かれる事があります。
 これは「話題のダイエット器具を買えば痩せるのか」という問いに似ていて、「これをすれば埋まる」という魔法の玉手箱のようなものは現実にはありません。人口がどのくらい減っているのかと言ったエリア状況にもよりますし、そもそもの家賃設定やライバル物件の状況、あるいは今の入居者の属性や仲介会社の実力等、様々な要素が組み合わさっての空室。ターゲットをしっかりと設定して戦略的の投資判断をしなければ、空室対策として有効に機能しない事もあります。
 簡単に言えば「リノベをしても決まらない事もあります」。ビジネスですから、投資対効果としては結果が伴わずリノベ前と比べて収益悪化という事もありえます。

とはいえ、物件を磨かないと
家賃を下げるばかり

 「結局、リノベをやっても埋まらない人がいると聞いた。だったら家賃を下げた方が確実だ」という声もよく聞きます。しかし、これは乱暴な言い方で、家賃を下げ続ける事は収益構造を悪化させるばかりです。Vol.47で、ラーメン屋の競争に例えた話を思い出してください。ラーメン屋が増えすぎて客が入らなくなったから、500円、400円、300円とラーメンの値段を下げる競争をし続けても、その先にあるのは収益悪化による破綻です。適正な価格で美味しいラーメンにする必要があります。その為の手法のひとつがリフォーム・リノベーション。
 いわば、麺を変えるのか、スープを変えるのか、チャーシューを変えるのか。近隣のラーメン屋さんの特性や地域のお客様の好みも分析し、正しい投資をしなければなりません。

「バストイレ別」は
もう当たり前

 「バストイレ一緒で長期空室になっている」→「だったらバストイレ別にしよう」というリフォームプランです。「築20年・バストイレ一緒・家賃5万円」という物件が決まらない。そこで50万~100万円前後かけてバストイレを分ける工事を行なった。それでもやっぱり空室のまま・・・。
 「ポータルサイトのせいだ」等という乱暴な声も聞きます。「築20年で検索されてしまうから、埋もれてしまうのだ。こんなにリフォームにお金かけたのに」という意見です。果たしてそうでしょうか? 一般に既にバストイレ別の物件は90%を占めています。残り10%の劣位にある物件がセパレート工事をしてもまだ、「当たり前」になっただけ。仮に「築年」という検索項目がなくなったとしても、近隣のほかの物件に「勝てる」要素までは進化出来ていません。エアコンや温水洗浄便座等も同義です。賃貸マーケットにおいて「当たり前」と思われている要素は、「勝てる」という段階までは来ていません。
 ラーメン屋に例えるならば、「お金をかけてチャーシューを一枚載せたのにちっともお客さんが来ない」という話。既に周りのラーメン屋さんもチャーシューを乗せていて、それはお客にとっては「当たり前」というレベルだったというわけです。だからと言ってバストイレ別のリフォーム工事が無駄とは申しません。それだけでは勝てないという話です。

「流行」というだけで
満室になると思いこまない

 「壁紙を自由に変えられるようにしたのに」「DIYにしたのに」と言った手法も流行っています。しかし「本当にそれだけで他の物件よりも魅力的になった」のでしょうか?
 「壁紙を選べる」というのは「カスマイズ賃貸」という手法で、最近の流行です。私自身、賃貸物件の壁紙は全部、白ばかりで魅力に欠けていると思います。もっといろいろな色があるべきだと思っています。ピンクにするのか黒にするのか選べる賃貸というのはそれだけでとても画期的です。その発展形とも言うべき潮流がDIYです。
 しかし、カスタマイズやDIYをしても決まらない物件もあります。なぜでしょう?
 「普通の白い壁」<「カラフルな壁紙」<「壁紙が選べる」<「自分で壁紙が貼れる」
と、物件の魅力は上がっているはずなのに。
 ラーメンに例えてみましょう。
 「ありふれた具が乗っている」<「ちょっと変わった具が乗っている」<「乗せる具が自分で選べる」<「自分で調理して乗せられる」
このように書くと気がつく事があります。「誰もがそんなに具を選んだり、調理したりする事を望んでいるのか」という点です。もちろんそういう人も沢山います。しかし、マストではありません。「壁紙の色」も大切ですが、「収納」や「床の色」だって本当は選びたい。「海苔とチャーシューとメンマの産地が選べる」という先が必ずしも「自分でチャーシューを茹でられる」という道だけでなく、「エビや特選卵が乗せてあり美味しい」でも良いわけです。カスタマイズやDIYを完全否定するつもりはもちろんありませんし、とても素晴らしい空室対策のひとつだと思いますが、「それだけやればどんな物件でも埋まる」というわけではないものです。

鍵はターゲット設定と
特異性

 では、空室対策でのリフォーム・リノベでの極意は、なにか。私はズバリ、「ターゲット設定」だと思います。

 名古屋で常に満室経営をされている大家さんが、玄関にも室内にも綺麗な花を飾っています。だから「花を飾れば満室になりますよ」という事ではなく、なぜこの物件は花が常に飾られ、満室なのかにこそヒントがあります。

 この物件のターゲットは「名古屋で単身で暮らすキャリア女性」なのです。仕事もオフを充実した生活をしたいと感じる女性限定のマンション。だから常に鮮やかな花が飾られている。そうした女性を意識して、大きな洗面台・かわいい玄関マット・防犯セキュリティ・沢山の収納スペースがある。だから築年を経ていても、人気なのです。

 あるいは、都心の駅から離れた物件で、満室が続いている。駅から遠い事もあり、バイクで通う現場労働者が多いこの物件。道路からスムーズに出し入れが出来て、屋根付きのバイク置場が魅力です。簡単な修理道具もあり、バイクを通じての共通の友達も作りやすい物件です。

 楽器が吹けるミュージションという物件を見学に行きました。まるで放課後の校舎のように廊下には管楽器や弦楽器の練習する音が聞こえます。が、室内は完全防音。むしろ廊下に音を逃がして、隣室には聞こえないよう努力されているそうです。音楽好きが借りていて市場の1.5倍の賃料で借りられています。
 シングルマザー限定のシェアハウスも見学に行きました。母子家庭手当を受給する為にもシングルマザー限定物件は必要性が高いそうです。とても高い稼働率でした。
 このように「誰に借りて頂くか」という発想でのターゲット設定が重要なのだと思います。「壁紙を選びたい人」「自分で壁紙を貼りたい人」というのもひとつのターゲット設定であり、その人に響く事で借り手がつくのではないでしようか。

高くても「黒ウーロン茶」が
売れる

 賃貸物件は比較的画一的な物件が多いものです。地主にしてみれば、元々、節税対策の資産活用方法として不動産経営をしています。それゆえ、借り手のイメージも「単身」「カップル」「ファミリー」とかなり曖昧で、ハウスメーカーの定型の企画商品で建設している。いわばどこにでもある普通の無難な物件、となっています。
 こうした普通の無難な物件が余ってしまっているからこそ空室が増え、魅力が付加されずに、家賃だけが下がっているのです。

 「どこにでもあるウーロン茶であれば、安い方がいい」のは通常の消費者の感覚です。だからこそ、「太っているあなたには黒ウーロン茶」「血圧が高めの方にはゴマ麦茶」と、ターゲットを設定して、飲料メーカーも闘っています。
 オンシーズンに向けて「うちの物件に住む人、住んで欲しい人はこんな人」とターゲットを設定してみましょう。そして、その人が求める「個性」を伸ばしましょう。
 「バストイレ一緒を別にする」というのは、「欠点を補って当たり前のレベルにする」という手法で、大量な空室時代には勝てないかもしれません。例えば、「このエリアは学生が多いから、広いエントランスに伝言板を作ってあげて、ゼミのノートの貸し借りなども出来るようにしてあげよう」といった「ターゲットが求める事」を「個性的」に「長所を伸ばして取り組む」という事が有効なのではないでしようか。