関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.5

2015.01.06

大家さんと入居者から怒られる管理の仕事。
共感しすぎない事が仕事のコツ。

管理という仕事は、クレーム産業。
入居者と大家さんに挟まれる仕事でもあります。
ある時は、大家さんから「こんなの大家が負担する事じゃない」と言われ、またある時には、入居者から「これは僕のせいじゃない」と言われる。
その難しい仕事はストレスのかかる仕事なのです。

写真はイメージです

借りた物を綺麗にして返すのは
当然のマナー?

 大家さんの中には、まだまだ、「貸してやっている」というスタンスの人は少なくありません。先祖代々の大切な土地に、借金までしてアパート・マンションを建設した。そのきっかけは、相続税対策で、そもそも不動産投資にさして明るい知見があったわけではないという方も少なくありません。そうなると「借りたものは綺麗にして返すのが当たり前」「人の物を借りたんだから、返す時には元の通りにするべきもの」といった「べき論」で原状回復を議論される方もいます。こうした方に「法律では」「判例では」と言っても、なかなか話が決着しません。そもそもの哲学が異なる為、「法律がどうあろうと、昔からこうしていた」「こうあるべきだ」「だってそうだろう」と議論が平行になりがちです。原状回復の原状が、貸した時の現状を指すものと思い込んでいたりするものです。

借りる側も言いなりにはならない。
法律も判例もネットですぐに一般化

 一方で、最近の入居者さんも言いなりにはなりません。契約した時にはそれほどあれこれと注文をつけなかった入居者さんであっても、ネットで調べたのか「原状回復義務と言っても、なんでも入居者が負担すべきではないそうですね」と言ってくるケースもある。そういう人の中には「法学部を卒業するので、少額訴訟も一度経験してみたかった」などという猛者もいて、なかには見積もりを全てチェックして、自然損耗や減価償却について、しっかりと理論武装しているケースもあります。こうなると、特約を結んでいたとしてもかなりやっかいなことになります。たしかに入居中につけた傷や損傷であったとしても、すでに減価償却期間を経過しているから、元に戻す義務はないと主張されると、そう簡単には事は進みません。
こうしたケースではさまれてしまうのが管理会社の立場。大家さんと入居者さんという二人のお客様の利害に挟まれてしまいます。

本来は、大家さんと入居者さんの紛争。
管理会社はあくまでも話を仲介する立場

 大家さんと入居者さんは、このように当事者どうしの利害が反する為、双方がもめると感情的な対立となってしまい、「言った。言わない」のやりとりになってしまったり、そういう言い方は腹が立つといった対立構造になってしまったりと言う事になりかねません。だからこそ、第三者の立場で、プロの意見で中立に双方の話をつないでいくのが管理会社。「どっちの味方なんだ」と双方から言われがちですが、実は、双方がお客様である立場でもあり、どちらかに肩入れするというのもおかしなものなのです。
ところが、「管理会社からも、入居者に原状回復費用を全額払えと言ってくれ」とか「原状回復義務は、この壁紙にはないと大家さんに言ってくれ」と双方から頼まれてしまう事もあります。あくまでも大家さん・入居者さんの立場にたちつつ、双方の主張を伝え、折り合いを付けて行くのも仕事のうちです。そうでないと、双方から怒られ、双方からののしられ、大変なストレスで管理会社の担当者がつぶれてしまいます。

ダブルバインドの克服法

 こうした双方の上司、あるいは命令系統の指示が矛盾するケースをダブルバインドといいます。学校の先生は勉強しろと言い、部活の先生は勉強はいいから練習しろ、というようなケースは、子供は双方の指示に挟まれて、どうしていいか分からなくなってしまうものです。
管理の仕事は、こうしたケースに陥りがちな特殊な仕事です。大家さんと入居者さんというケースに限らず、例えば騒音クレームであれば、発生源たる騒音者と被害者というケースもあります。
 第一報は、Aさんという方から隣のBさんの生活音がうるさいと苦情が入ります。Aさんはお困りだろうと同情し、Bさんを訪ね、Bさんに静かにするようにお願いすると、実はBさんはかなり騒音に気を付けて暮らしていた。少しでも音がすると、隣のAさんが怒鳴り込んでくる為、とても萎縮していた。実は一見被害者であるAさんの方が、異常に神経質で、歴代の隣人を悩ませていたクレーマーであったというケースもあります。
このように、管理の仕事は、どちらか一方を犯人と決め付けず、双方の言い分や状況を冷静に傾聴し、双方の納得できる着地点に導く力必要となります。

「共感する力」と共に、
「冷静な第三者の力」

 ある種、クレームやトラブルは、自分が被害者だという主張には、一定の利があり、そこに「それは大変ですね」と共感する力は必要です。ところがそれが「なんとかしなければ」と同情や使命感まで感じてしまうと、相手との紛争を代理闘争し、やがては、双方の利害に挟まれて、ストレスで疲弊してしまいます。プロとして、冷静に何が課題でどう折り合いを付けるべきかを考える力が必要となります。次号では、事例を元に、管理会社のスタンスをご紹介します。