TOP満室経営のツボvol.49

関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.49

2016.11.04

私の入口は他人の出口。
なぜ今、地方都市の出物を薦められるのか。

全国を講演で回っているとこんな話を聞きます。
「売り物件はないかと、東京のカタカナの会社から電話やFAXがすごいのだが」。
中古物件価格が上がる中、首都圏の利回りは悪化し、地方の物件を探すブローカーのようなプレイヤーが闊達に活動している。
さて、地方は「買い」か。

写真はイメージです

「求む売物件」
各地で耳にする需要

 全国で講演していると各地の大家さんや不動産会社の方々とお話をする機会が多くなります。一方的に講演するだけでなく、こうした機会や懇親会等で、タイムリーな生の声をお聞きするのは、私にとっても貴重な機会です。
 こうした際に、最近耳にするのは「賃貸物件の一棟売りなど収益物件はないかと連絡が入る」「あまり聞いた事がない東京のカタカナの会社から電話やFAXがすごいのだが」という声です。地方側にいると「こんなに人口が減って、空室が増えているのに東京の人はお金が余っているんだね」というような感覚だが、かなり闊達に声が掛るようです。
 なかには「いやー、困っていた物件が東京の投資家に売れたよ」「ファンドだかリーとだかよく知らないが、なんだか売れて助かったよ」と、実際に売却した側のお話を聞く事もあります。

利回りの良い地方物件

 一方で、首都圏の収益物件を売買するベンチャー企業の方が元気です。同じように首都圏で講演をしていると、こうした企業の方にお会いする事があります。明らかに若い経営者が多いのですが、「今、収益物件は熱いですよ」「昨年よりも好調で社員も増やしているんです」「本社を都心に移しました。よろしくお願いします」と元気いっぱいだ。
 「どうしてそんなに景気がいいのですか?」と聞くと、「今は低金利で買い時です」「都心では物件も少なく、出ても4%とか魅力が低く、総額が高い。一方地方は、表面利回りもいいし、総額も安いんですよ」「買いたい人は私の知り合いに沢山いるんです」といった具合です。なるほど需要と供給として、ある種のマーケットが存在しているようです。

双方の思惑を考えると

 さて、この「相手の思惑を読む」というところが大切です。
 地方都市側は人口減少で将来の空室リスクが心配。首都圏側は利回りが悪く表面利回りの良い、総額の手ごろな物件を探している。
 悪く考えれば、地方で困っている物件は売り抜けるチャンスである事になります。今なら高値で売り抜ける最後のタイミングかもしれません。相場が高く金利が低い。ここで、たとえばフリーレントなどでなんとかこの商戦期に満室にし、「現況満室」で「高い利回り」で、よくわかっていない都会の投資家に売るタイミングでもあります。埋まらない埋まらないと文句を言っても新築は建ち、築年は増え、人口は減る。売るなら今でしょう。
 となれば、買う側はこうした表面利回りだけでなく、入居者の属性や賃料収入状況などを正しく精査した上で、その地域の人口変動や物件を磨くテクニックになんらかの余地があれば、買いでもあります。「自分なら満室を維持できる」という判断でもいいですし、「数年、賃料収入で回して、また売り抜ける」という判断もあるでしょう。このマッチングは必ずしも否定ばかりするものではなく、「相手の思惑を理解して、ババをつかまない」という事だけ気を付ければ、WINWINかもしれません。

一歩踏み込んで、
「先々」を考える

 表層的には、おそらくこんな感じなのですが、もう少し深読みして前向きに考えてみましょう。
 まず売り手側としては、後継者の問題があります。物件も築年を経ましたが、大家も歳をとった。一方で、後継者たる子供や孫は、首都圏に住んでいるというケースがあります。このまま頑張って先祖代々の土地を守っても、空室ばかりでは、相続させても不良債権になりかねません。高値で売れるタイミングで「良い出口」をこの投資でまっとうし、現金化して老後に備えるほうがよいのかもしれません。あまり帰ってこない子供達に引き継いでも物件の再生は難しいかもしれませんから。
 と、考えれば、実は今、「空室が多くて困る。人口も減っているのに、また近所に新築が建つ」と嘆いている大家は「今日も売らないという経営判断をした」と言えます。そう、「売らない」という経営判断をしたならば、嘆いている暇はなく「売らずに持つ以上は勝つ」必要があります。リフォームするなり、ネット無料物件にするなり、一歩踏み出して闘うべきでしょう。
 では買い手側はどうでしょう。そう、今、買おうとしている物件は、誰かの出口です。「このままでは儲からないから売りに出た」という認識をすべきです。どこかに高利回りの物件はないだろうかと探した。すると行った事もない地方都市でいい利回りの物件が手頃な値段で出た。さあ、とっとと買おう、という前に自分なりの打ち手を考えておくべきなのです。
 「俺なら、リフォームすればまだいけると思う」「得意のアクセントクロスとDIYをやってみよう」「周辺をスーモで検索したらエアコン付きが少ないから、そこは投資を見込もう」「近くの大学で外国人留学生が増えているから、積極的に外国人の入居を促進すれば、回るぞ」などと、「表面」だけでなく「深層」で勝負に勝つ必要があります。

「売り逃げ」をする不動産会社は
本当のパートナーではない

 さて、このマッチング。双方の不動産仲介を行なう企業のスタンスを私は気を付けてみています。
 売り手側は、ずっと管理を手伝ってきて、長く入居促進で苦労したものの、大家さんとともに矢が尽きたという気持ちで、自らの管理物件数ダウンにもなるという状況で「売る」という決断をしました。すなわち、今後管理を任せても収益改善の的確なコンサルを行なえるかは、不安もあります。
 本来、売り手側の不動産会社は売ることでの仲介実務だけでなく、現金化する事での節税や相続対策、残された物件があれば全体のポートフォリオの設計など、「売って終わり」ではなく、「これまで長く付き合ってくれた大家さんのみとり」までサポートすべきなのではないかと思います。しかし、売ると決まると、そこがゴールと勘違いし邁進してしまうかもしれません。
 一方、買い手側は、その地方の事も知らずに「どこかによい利回り物件はないかと探しまくって見つけた」という状況であり、「売れたら後の事は知りません。遠いので先々の管理業務も引き受けません」てな状況になる可能性があります。
 ここがポイントです。双方の不動産会社が、「もうこの物件の先々の事は知りません」となってしまいます。これでは心もとないものです。
 特に購入側は、先々の管理実務や滞納督促、あるいは入居対策に不安を抱えかねません。自分だけでなく、買いつけ時の不動産会社も「行った事も見た事もない」という状況では、来年の募集すら心配です。
 そこで「地方側で売る不動産会社」と「首都圏側で買う不動産会社」に加えて、「その後、物件の面倒をみる現地の管理会社」を検討しましょう。そもそも自主管理等は遠隔地では出来ないのですから、信頼できる現地の管理会社を使命すべきです。売り手側の不動産会社がそうなるかもしれませんが、必ずしも入居者獲得や空室対策に秀でているとは限りません。
 法人の転勤に強い地場会社、仲介力のある不動産会社、学生の入居に強い会社など、現地の仲介・管理会社にも個性があります。こうした点も冷静に見極めて、失敗しない収益物件投資をして行きましょう。それが出来れば、双方の動機はともかく、よいビジネスが成り立つのではないかと思います。