関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.46

2016.09.21

見積もりを比較する前に
是非とも考えたい事

「工事をするんだけど、もっと安くならないかな?」そんな相談を受ける事もあります。でも、私はそうした問い合わせにはあまりよい返事はしません。
ちょっとそんな事例をお話します。

写真はイメージです

昔の級友から送られてきた見積書

ある日、突然、フェイスブックから昔の級友からメッセージが届きました。「えー、懐かしいな。これだから楽しいよね、フェイスブック」等とやりとりしていた所、「上野君、ところで不動産のなにかやっているんだよね。実は僕、仙台に3LDKのマンション持っていてね・・・」とのこと。私も仕事中でも電話がかかるようになり、自分の投資用物件について相談したいとの事。
 なんだそんなことなら、最初からそうと言ってくれれば、と思ったのですが、すかさず「それで、退去が出たから修繕するついでにフローリングにしようと思ってさ。ちょっと見積もり見てくれよ」と見積もりの画像が添付されてメールされてきました。

見積もりだけでわかるわけがない

さて、どのくらい破損や故障があり、なぜリフォームしたいのかもさっぱりわからないのに、見積もりだけ見て、高いも低いもこちらではわからない。エリア毎に単価の相場も違いますので、もしちゃんとやるなら、現地の他の会社とアイミツにするべきでしょう。
 ところが、見積書に書いてある文言と数字を見れば、「ここは1万円下げられる」「ここは取り過ぎ」などと知恵がもらえると級友は想像していたのかもしれません。今から思えば、「詳しい人がフェイスブックの友達にいるようだ。タダで情報を得て、ちょっとでも値引いて損を減らそう」という想いだったのかもしれません。
 しかし、そうとは考えなかった私は、「長期空室に困って対策としてリフォームするのかな」と解釈しました。よしそれなら級友を力になろうと決意しました。
 仙台のマーケットの事もそれなりに把握していましたので、「うーん、その会社だと、今はなかなか空室は決まらないと思うよ。震災需要も終わって環境も変わって仙台はいまこんな感じなんだよ。3LDKなら法人に強い会社を勧めるよ。見積もり数字だけだとわからないから、よい不動産会社を紹介するよ。その会社に決めるかどうかは、話をしてからでいいから、物件見てもらって、そこからも見積もりもらって比較したらどうだい。その会社なら上手く行けば過度なリフォームもしなくても埋まるかもよ」と話しました。

投資物件のマーケット環境は
流入流出だけでなく
不動産会社のマーケット把握も

実際、人口が増えた減ったという話や、近隣に新築が建ったとか、最新の賃料相場がどうなのかといったマーケット事情は、どんどん変わります。今回の事例でも級友は金沢に転勤になっているそうで、さっぱり肌感覚がない状況でした。
 加えて、不動産会社の力関係も変わっています。仲介が強いエリアもあれば、管理会社が強いエリアもあるのです。そういう話から、「リフォームの見積書の金額の是非より、いっそ管理会社を変える事も視野にしつつ、見積もりをとったらどうだい」という話をしたつもりでした。
 ところが当人は今から思えば、ちょっと見積書に僕からの知恵で難癖つけて値引きでもしたかったのでしょう。
 「いやー、ずっとこの会社にはよくしてもらったから、別に不動産会社は変えたくないんだけど」とのこと。
 口には出さなかったけれども、「フローリングだけ安く貼ってくれるとこないかな」的な腹づもりだったのでしょう。
 突然のやり取りは突然「もーいいや」という感じで終わってしまいました。

管理の信頼関係とは?

本当は「○○会社はよくやってくれる」のであれば、その会社の見積もりにケチをつけて1万円ぐらい値引いたところで、たいした話ではないかな、とも思いました。よくやってくれる会社さんに少しぐらい手間賃を払ってもバチは当たらないのではないか?
 おそらく直接発注すればもっと安い会社はあるでしょう。しかし、現地にも行かずに、知らない会社にフローリングだけ発注して、上手く行くのでしょうか。
 管理会社変更の可能性があるのであれば、他社もガッツを入れて検討しますが、そうでなければ区分所有の一物件のために頑張るモチベーションはなかなか湧かないはずです。
 聞けば、ローン残高はまだまだあり、賃料設定は現地の不動産会社のいいなりで下がっており、常に逆ザヤになっている状況との事。客観的に見れば「○○会社にはお世話になっている」とは考えにくい状況であり、物件の募集広告も工夫が足りないと感じました。こうした根本を見直す事無く、見積もりの単価だけケチっても上手くはいきません。
 コストを削減する姿勢は間違っていませんが、関係するステークホルダーの頭の中を想像して、どうしていくのが最適な経営か、という発想がなければ収益物件で稼いでいく事は難しいはずなのです。

たとえ距離が離れても
人と人との関係性が大切。

さて、この物件は決まったのでしょうか? 見積もりを安くするために声をかけたであろう級友は、あれから一切連絡がなくなりました。
 「上野のアドバイスでネット広告を変えたら、入居者が決まったよ、ありがとう」とか「まだ決まらないんだけど、やっぱり上野の推薦する不動産会社と電話で話してみようかな」とかもありません。
 おそらくは、そんな接し方で「空いた時には、いつもお決まりの○○不動産によろしく」と丸投げしていたのでしょう。距離があるので、現地に託す事は普通です。でもおそらく、決まっても「ありがとう」もなく、空いても相談もなく「フローリングしたい」と思い付きだったのかもしれません。
 ちょっと言いすぎかもしれませんが、そうした姿勢が空室期間を伸ばしているかもしれません。
 毎年物件は歳をとり、人口は減り、ライバル物件は増えて行くという時代です。収益物件の管理会社の人のモチベーションを高めるコミュニケーションひとつで、こんな状況も一転するかもしれません。
 やはり原点は人と人。そこを間違えると、収益物件といえども・・・。そんなことを感じる出来事でした。