関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.34

2016.03.24

投資家にとっての掘り出し物と
入居者にとっての掘り出し物

大家さん向けのセミナーなどで講演し、質問される場面や懇親会等で、収益物件の投資家の皆さんから「掘り出し物を買いたい。どこにあるのか?」と聞かれるケースがあります。
また、雑誌のインタビューやテレビラジオ番組などで、「掘り出し物に住みたいのですが、どうしたら見つけられますか?」と聞かれるケースがあります。
今回は、この「掘り出し物」について解説します。

写真はイメージです

掘り出し物ってどんな物?

収益物件を運用する皆さんから「掘り出し物はないですか」と聞かれる事があります。売り手が売りを急ぐようなケースでは、実は掘り出し物が出る事がありますが、そうした情報が私の耳に届く前には売れてしまいます。ですから「あるなら、私が知りたいです」とお答えしたい話です。
 さて、それでは話が終わってしまいますね。では、掘り出し物って、そもそもどんな物件を期待しているのでしょう?

利回りがよくない

「いやー、最近は表面利回りが3%とか4%なんていう物件が多くてね。これもマイナス金利の影響かな。なかなかよい物がないよね」こんな会話もお聞きします。
 新築物件の価格は、土地価格の上昇・輸入資材の高騰、復興やオリンピックでの職人確保の難しさ等から、ずいぶんと高くなっています。これに引っ張られるように中古流通の相場も押し上げられています。総じてアベノミクス効果といえるかもしれません。
 一方で、家賃は下落傾向です。賃貸入居者の収入は決して上がっていませんし、人口が減り物件は余る傾向。物件の購入価格が上がり、賃料収入がダウンするのですから、当然利回りは悪化します。「投資物件の利回りが悪い。掘り出し物はないのか」という発言は的を得ています。

利回りのよい物件は
地方にあります

さて、「利回りが良い」という物件は、実は地方にあります。首都圏の中古流通価格が上がっている一方で、地方はまだそれほどでもありません。こうした物件が、「満室想定賃料収入がそこそこあり、利回りがいい」という状態で売りに出ている事があります。しかも「現況満室」。となれば「買い」でいいでしょうか?
 疑問に思うのは、「なぜそんな利回りのいい物件が売りに出したのでしょうか?」。急ぎ資金が必要だった、という事情があれば話は別ですが、ここは慎重にみたほうがよいでしょう。特に土地勘のない地方。例えば、大学の移転や大規模工場の移転が決まっていて、将来の空室が目に見えていれば、今、売り抜けたい。そういう事情があっての「高利回りの売り」かもしれません。掘り出し物には掘り出し物ならではの「ワケ」があるものです。

掘り出し物に住むことは可能か

一方、雑誌やテレビの取材等を受けると「掘り出し物はないですか」と入居者目線で聞かれる事もあります。
 私の返答は「ありません」です。誰しもできる限り高く貸したい。そういう現状でも空室があるから競争の中で賃料を下げて行く。となれば、相場とかけ離れたお得な物件がほいほい出てくるという事は考えにくいものです。
 いわゆる「事故物件だから」という理由であれば、確かに賃料は安いかもしれません。しかし、それはそれでやっぱり「安いなりの理由」というものは存在します。

「掘り出し物とは呼べない物件」を
「掘り出し物に育てる」

しかし、収益物件の投資家が掘り出し物を手に入れ、そしてなおかつ、入居希望者に、その物件を掘り出し物として提供する事はできます。
 えっ? 上野はいったいなにを言っているのだ、と思いましたか。投資家にとっても、入居者にとっても掘り出し物は存在しない。あっても「わけあり」のはず。なのに「手にする事ができる」とは。
 「掘り出し物に育てる」という事が私達にはできるのです。

安く買える物件を、
高く回せる物件に磨きあげる

たとえば、競売物件で落札した物件。決してよい物件ばかりではなく、どんな入居者がいるかはわかりません。決して「お買い得」というわけではないでしょう。
 しかし、「安く」手に入れる事は可能です。今は金利も低く、物件の質を問わなければ、収益物件を手に入れる事は可能です。しかし、そのままでは空室率も高く、利回りもあまりよくないでしょう。
 そこで、その物件の入居率をあげるために手を入れるのです。物件を磨きあげるというわけです。
 大規模リフォームやリニューアルをして成功している企業が沢山あります。中古を買ってリフォームをする。そして入居率を高めたり、家賃を上げたりして収益性を高める。独自のノウハウを持つ企業はこうして、努力をして物件力を上げて行きます。
 こうした物件は、実は入居希望者には掘り出し物となります。築年は古く、欠点もあるのだけれど、デザインがオシャレだったり、あるいはレトロだったりして、人気を集め、周囲の物件とは差別化されています。「同じ賃料なら、リノベしているこっちがいいな」「DIYをみんなでしていて、とても楽しそうだな」「へえー、大きな鏡があって部屋が広く見えるね」「カフェバーみたいな部屋だね」などと注目を集めます。まさに、ジャンクショップやバザーで見つけた「掘り出し物」となるわけです。

過剰な投資の前に、
物件の長所と短所の分析を

たとえば、駅から遠く、通勤通学に不便でスーパーも遠い。築年も古く、魅力が薄い。だから空室が多い。だからこそ利回りが悪く、安めに売りに出た。こんな物件をどう「育てる」のか。
 こうした短所は、そのまま長所にもなりえます。そんな物件だからこそ、クルマを持つ人には、都会の喧騒から離れられて、静かに暮らせる。だとしたら、例えば駐車場に手を入れる。そして駐車場から部屋までの導線を明るくする。あるいは車庫から濡れない工夫を考える。すると近隣にはない個性をもった物件に入居者が集まる。
 あくまで一例にすぎませんが、考えればなにかしら打ち手は見つかります。投資信託や株では、私達個人がその運用の上げ下げを意図的にコントロールする事は難しいものです。しかし、目の前の物件は、いくらでも改善できます。まずは掃除をしてみるのもいいでしょう。草むしりから始めてもいいかもしれません。放っておいたら、利回りは悪化する一方かもしりませんが、手をかけたら改善するかもしれません。
 掘り出し物は、探すのではなく、育てる。そんな発想も賃貸経営に必要な時代がやってきたのではないでしようか?