関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.33

2016.03.09

東海道五十三次を想う。
街の個性とデザイン

投資用の収益物件を購入し、運用するという事は、すなわち賃貸物件のオーナーであり、街を創る一員でもあります。「現地に行った事はないよ」「遠く離れていて、今、街がどうなっているか知らない」そうしたオーナーも多いと思いますが、今回は街づくりという観点で書かさせていただきます。

写真はイメージです

かつて、街には個性があった

歌川広重が書いた東海道五十三次。東海道の宿場53箇所を描いたこの浮世絵は、某お茶漬けの付録として、私の子供時代の目を和ませてくれた。53枚集めるようなマニアではなかったものの、江戸時代の風景が、53の宿場毎に名所や名物が存在し、旅人はその場所場所の思い出や出会いを語り、様々な風景が話を盛り上げてくれた。
 53の宿場で最も小さな宿場であったのが静岡県の鞠子宿。丸子とも書くこの宿場には、とろろ汁の看板を下げた茶屋の絵が書かれている。現在も存在する自然薯の名物のとろろ汁を出す老舗「丁子屋」に、昨年、久しぶりにお邪魔させていただいたが、大変美味しかった。何代目かの後継ぎが自慢げに話してくれる伝統は、自然と人間の長い歴史を感じさせてくれて、とても心地よいものでした。
 53次には53の個性があり、街それぞれの違いがあり、愛おしさがあったのだと思います。

現在の東海道は、
どこもかしこも同じ風景

今は、どうでしょうか?
 すべての新幹線の駅名で、検索して、駅前の写真を印刷して見たが、ちょっとかき混ぜると、もう、どれがどこの駅かは、さっぱりわからない。
 どこの駅前にも同じようなコンビニがあり、同じような建物が建てられていて、似たような街並み。大量生産されたハウスメーカーの賃貸物件が軒を連ね、分譲マンションもよく似た外観です。さらに郊外にいけば、土地活用物件として、これまた似たような物件が立ち並びます。全国の農家に元気に飛込むアパート営業マンは限られた数社の激戦ですし、農協に行けば大手ハウスメーカーのチラシ。大量生産によりコスト削減された家が、全国どこにでもあります。
 街は、すっかり個性を失い、画一化のスピードが加速しています。

では、パリは? ロンドンは?

海外ではどうでしょうか? 実は日本のような画一化された風景の都市ばかりではありません。例えばパリの街では、昔ながらのレンガの家が並びます。ナポレオン3世により整備された街並みは世界で最も美しいとされています。
 さて、こうした風景に、大量生産されたよくみるあの日本の物件は馴染むでしょうか? コンビニやファーストフード店でさえ、そのデザインに品格や風景との調和を考えてしまう。そうした街並みは世界中に存在します。

どこにでもある物件が
余り始めている

こうして画一化が進んでしまった日本の物件は、これから余り始めます。人口が減り、世帯数が減り、新築がさらに建ち続けるからです。
 空き家問題が社会問題となっていますが、衛生上・防犯上の問題だけでなく、私達、大家や不動産オーナーにとっては収益棄損リスクが高まっていく状況は、大きな危機です。しかし、「だから新築を建てるな」という建設阻止議論の前に、今、街がどうなっているか。高度経済成長と核家族化の推進の中、建てろ建てろと大量生産された無個性な物件が街に乱立し、全国どこの地方都市も個性を失ってしまいました。
 そうした、「どこにでもある物件」が「どこにでもある街」の中で競争力を失っていきます。どこにでもある街に仕事がなくなれば、職を求めて人々は都心に移住します。残された住人が住まいを選ぶ時に、どこにでもある物件が並んでいれば、賃料と駅距離と広さと築年で比べるほかありません。

「ちょっと個性的」がウケル時代

こうして画一化が進むと、時代は「ちょっと個性的」に目が向きます。昨今、築古でも借り手がつきやすい物件は、クロスの使い方や照明の選び方、あるいは収納の設置の仕方が、ちょっと個性的です。
 この「ちょっと」という所が大切で、決して奇抜で突拍子もないものが人気というわけではありません。
 たとえば、アクセントクロスが2面選べる。ピンクだったり、レンガ風だったり。あるいは、ダウンライトでチョイ悪風な間接照明や、かわいいシャンデリア。押し入れを改造してクローゼットにして、「見せる収納」にしてしまうという事例も効果的なようです。
 ちょっと個性的なこうした物件は、きちんとその良さを写真で表現できれば、相場の賃料であれば、スマホの検索一覧写真の中で目立ち、入居者の目に止まります。似たような物件写真が並ぶ中で、異彩を放つ存在は、同じような浮世絵を何枚も見た後に、歌川広重や葛飾北斎の浮世絵に目を留めた江戸時代の庶民のように心に響くものなのです。

街を創るオーナーとして

こうして考えると、まさに収益物件のオーナーは、収益だけを追い求めているわけではなく、街を創る重要な名士のひとりなのです。ご自身の物件を、中も外もちょっと工夫をすることで、魅力を高める事ができます。魅力的な物件に魅力的な人が住み、魅力的な街を創って行く。私達は、街を創る一員なのです。
 綺麗に清掃が整った物件は住む人も、そのそばを行き交う人も気持ちいいものです。「こんな物件にして、こんな人に住んでもらい、こんな街にしていきたい」そんな想いを持っていただければ、賃貸経営はもっと豊かなビジネスになって行くと思うのです。