関西の大家業をもっと楽しくする

ヒント集

vol.122

2019.12.12

自主管理か管理委託か。
一見お得な自主管理はホントに得?

先日、とあるセミナーで、講演後、
「質問ありますか?」というコーナーで、
「俺は、管理会社なんか信用できない。住人との接点も大事だと思うし、
自主管理が絶対正しいと思う」という言葉をいただきました。
そこで今回は、自主管理と管理委託について論じます。

写真はイメージです

「俺は自主管理こそ正しいと思う」
という質問。

 先日、日管協のセミナーで「先生の空室対策の話はマクロでは正しいが、ミクロでは間違っている。俺の物件では、あんたの言っている事をやろうかと思って、入居者に聞いたが、ネット無料もエアコンも温水洗浄便座も防犯カメラもいらないそうだ。それから、俺は、管理会社なんか信用できない。あいつらは、利益を乗せて発注しているから、大家が直接、工事会社に発注したほうが得だ。住人との接点も大事だと思うし、自主管理が絶対正しいと思う」という質問を頂きました。なかなか短時間では返答しにくい質問でしたので、今回、ここで丁寧に論じたいと思います。
 まず、これは「質問」ではなく「意見」です。
 これをやってしまうと、せっかく前向きに勉強をしようとしているオーナーは興ざめです。もちろん、入居者によってほしい設備は千差万別ですし、ネットを使わない入居者もいるでしょう。むしろ、ネット無料でないから、使わない入居者が多いのかもしれません。それを言ったら、なんであれ、マクロには正しくとも、ミクロには異なる事は起こりえますが、そうやってかつて「バストイレ別なんか不要」と言っていた方が、今、空室で苦しんでいるのも事実です。

自主管理が短期は得。
しかし、長期では・・・。

 たしかに、自主管理のほうが、原状回復工事費用を一番安い見積もりで実施できるかもしれません。当然、間での発注業務や工程管理の業務や負荷がかかるからこそ、管理料を請求されるからであり、管理料5%といった金額を削減し、自ら管理をする事はコスト削減となります。
 しかし、一方で、客付けを仲介専業に任せるという事になります。すると、不動産会社は設備提案やリノベ、あるいは建て替えなどを提案する余地はなく、なかなか決まらないと「家賃を下げる」しか手法がなくなります。そればかりか「オーナーからの広告料のアップ」を求め始めます。すなわち月々の管理料や修繕費をコストカットする一方で、家賃収入が下がり、かつ、広告料が上がっていく、ということにもなりかねません。
 また、ご自身が、クレーム対応や督促など、業務負荷を背負う事になります。物件も歳をとり難易度が上がり、かつ、オーナー自身も歳をとるため、しだいに業務負荷が上がる事もあるのです。

本物の自主管理は「プロ大家」と
なっている

 こうした「自主管理」の「収益物件のオーナー」の中には、①法人化し②社員を雇い③所有物件をコツコツ増やし④社員を雇って他のオーナーの物件を管理しているという雄もいます。
 京都では、100棟の所有物件を持つ、オーナーが自ら社員を雇って、管理会社を運営しています。神戸にもこうした方々はいます。こうなると、個人の年齢による業務負荷によるリスクは低減され、さらに大量発注などで、工事などの外注費用を削減できます。
 なにも大きくなる事ばかりがすべてではありませんが、「プロ大家」として成長をしていけば、収益性はより高まっていくのも事実です。

より勉強をして、プロになっていく

 現在は、民法改正や不動産テックなど、賃貸経営を取り巻く環境は複雑性を増しています。つまりは、管理会社であれ、自主管理オーナーであれ、変化する時代や法令をしっかり勉強する必要があります。つい数年前の常識が通じない世の中だからこそ、より多くの経験を積んで知識を吸収する必要があります。前述したプロ大家として規模を拡大せざるとも、知識と経験の量は拡大の必要が上がっているのです。

それこそ、ミクロの事情で異なる

 私は「自主管理か管理委託か」という議論すら、ミクロとマクロで異なると思っています。
 たしかに自主管理のメリットは、「管理料などのコスト削減」「住人との接点」など目の前の長所があります。一方で「家賃減少リスク」「広告費アップ」「住民と直接接点を持つことでのクレーム時の感情的やりとり」「自身の労務負荷」といったデメリットがあります。管理委託はこの逆となります。
 しかし、「ハウスメーカーの強引な販売で建ててしまったが、サブリース契約のまま管理会社はなにもしてくれず、どんどん契約賃料が下がり、建築不良も見つかった」といったケースでは「そりゃあ、そこに管理を任せない事も検討すべきですね」と思います。
 逆に、「自主管理なるが故に、仲介専業会社からどんどん生活保護の住民を入居させられ、滞納やクレームも多くなり、同じ物件に住む大家さんの家族自身の身の危険を感じたり、ご自身が高齢で、このまま実務を続けるのは難しかったりする」といったケースでは、管理委託するという道も検討したほうが良いと思います。
 すなわち、それこそ、個別性が強く「どっちが正解」とは言い難いものです。もはや、どれがいいかというよりは、「好きな方をいつでも選べる」ように柔軟に考えておくほうがいいのでしょう。自ら、収益物件オーナーが管理会社になるという道も含めて。
 少なくとも言えることは、この道のプロとして、空室対策や法令改正、あるいは入居者の意識変化を積極的に学んでいくことが、いずれにせよ必要な時代となっていると思います。