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ヒント集

vol.3

2015.04.27

先生!
知り合いも心理的瑕疵物件を
買っちゃいました。助けてください!

それは、またまたまた一大事!まずは落ち着いて。
前回お話しした判例から
自殺や殺人などの事故が起きた物件(訳あり物件)のポイントについてまとめてみましょう。
1:
いくつかの裁判例を見てみると、期間や居住目的や問題となった建物が残っているかどうかなど色んな要素を検討して解除まで認めるのか、損害はどの程度認めるのかを慎重に判断していることが分かります。
2:
このような物件を収益不動産として購入するのであれば、転売で大きな足かせになる可能性があると覚悟しつつ、「適正」価格(相当割安、つまり転売する際に相当値切られるであろう事を慎重に予想したうえで)で購入することになると思います。

まだまだ、参考になる判例はありますか?

 前回に引き続き、もう4つほど判例をご紹介しましょう。ぜひ、参考にしてください。

5:大阪地裁平成21年11月26日判決(殺人・解除肯定・契約条項上の違約金280万円)

事案の概要

 被告から不動産を買い受けた原告が、殺人とみられる死亡事件の告知義務違反があったとして、不動産売買契約を解除し、被告に対し、解除に基づく原状回復として売買代金相当額2800万円と違約金280万円の支払いを求めた事案です。

判断の内容

 被告側が事実を秘密して殺人とみられる死亡事件の告知を行わないまま売買しており、信義則上の告知義務に違反し、被告に債務不履行があるとして解除を有効とするとともに契約上の違約金280万円もあわせて認定しています。

評価

 被告は2800万円で原告に転売する前に死亡事件の告知を受けた上1120万円で買い受けていて、にもかかわらず、死亡事件を告知せず、その倍以上の金額で売っており、告知義務違反(債務不履行)は明らかな事案で当然の判断でしょう。  むしろ、被告は、購入する際に適正に死亡事件について重要事項説明を受けているが、その結果が2800万円の半値以下であることから、殺人とみられる死亡事件があった物件ではなかなか買い手がつきにくいことを示しています。

6:大阪高裁平成18年12月19日判決(殺人・損害肯定・売買代金の5%)

事案の概要

 本件は土地の買主が、売買以前に同土地上に存在していた建物内で殺人事件(約8年前)があったとの事実を売買後に知り、民法570条の「売買の目的物に隠れた瑕疵があったとき」に当たるとして、売主に対し、同条に基づき、損害賠償金751万5750円の損害賠償を求めた事案です。

判断の内容

 問題となった建物は既に存在しない、8年前の出来事ではあるものの、女性が胸を刺された殺人事件は病死、事故死、自殺に比べて残虐性が大きく、一般人の嫌悪の程度も大きい。また、新聞報道もあり、住民の記憶に少なからず残っているなどから、「瑕疵」にあたるとしつつも、多数の住宅や店舗がある生活環境、8年以上も前のこと、建物が存在しない、嫌悪すべき心理的欠陥は相当程度風化したとして、売買代金の5%を損害として認定しています。

評価

 殺人事件は、自殺などに比べて残虐性が大きいこと、報道もあったことなどから近隣住民の記憶に残っていることなどから、「瑕疵」にあたるとしていますが、問題となった建物がないこと、期間が8年と相当経過していることから、損害額を低くしてバランスをとっているようです。ただ、実際に転売などすると売買代金5%程度の減価ですむのかという疑問は残ります。

7:浦和地川越支判平成9年8月19日(損害肯定・約893万円)

事案の概要

 原告は、平成6年12月、被告らから土地・建物を、代金総額7100万円で買い受け、代金を支払って、平成7年4月、不動産の引渡を受けました。
 ところがその後、被告の関係者が平成6年7月に建物の中で首吊り自殺をしていたことが判明したので、原告は平成7年12月、被告らに対し、民法570条、566条により売買契約を解除した上、売買代金額の返還を求めるとともに、契約の解除が認められない場合の損害賠償を請求。
 原告は本訴訟提訴前に、被告に対し契約の解除を求めていましたが、損害を埋めるため、自殺の現場の建物を原告の負担で撤去し(撤去費用などに93万2900円)、更地にして6300万円で売却していました。

判断の内容

 土地と建物が一体なって売買目的物件とされ、その売買金額も全体として取り決められていました。しかし、建物で自殺があったことは、交渉過程では隠されたままで契約が成立したのであって、自殺の存在が明らかになれば、価格の低下が予想されたでしょう。本件建物が居住用であり、出来事が比較的最近のことから、民法570条にいう瑕疵に該当するとしました。
 本件売買契約当時の瑕疵の存在を前提とした場合の適正価格を認める証拠はないとしつつ、売買代金の差額(7100万円-6300万円+93万2900円=893万200円)を損害と認定。
 本件ではたまたま説明義務を果たして原告が売却したため、鑑定をしていないが減価部分が顕在化したため、このような認定になっています。

評価

 事故のあった時期も最近で、本件建物も現存し、原告が実際に転売で価格が下落した結果もそろっており、この裁判例の判断は当然だと思います。

8:横浜地裁平成元年9月7日判決(解除も損害賠償ともに肯定)

事案の概要

 原告は被告から昭和63年10月28日に、原告夫妻及び2人の子が居住する目的で本件マンションを代金3200万円で買い受け、手付金を支払ったが、その後、本件マンションにおいて、被告の妻が約6年前縊首自殺をしていた事実が判明しました。
 そこで、原告は、本件マンションを居住用に買い受けたものであり、そのような物件であれば、絶対に購入しなかったものであるとして、契約の解除と損害賠償請求を求めるとともに、手付金の返還及び売買契約の違約金の条項に基づき売買代金の20パーセントにあたる損害賠償を求めました。

判断の内容

目的物が建物である場合、建物として通常有すべき設備を有しない等の物理的欠陥としての瑕疵のほか、建物は、継続的に生活する場であるから、建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に原因する心理的欠陥も瑕疵であると解釈することができる。それが通常一般人において、買主の立場という立場から、上記事由があれば、住み心地の良さを欠き、居住の用に適さないと感じることに合理性があると判断されるものであれば、瑕疵ということができるとしました。
 この観点からみると、原告は小学生の子供2名との4人家族で、永続的な居住として本件建物を購入。本件建物は買受けの6年前に縊首自殺があり、その後もその自殺者の家族が居住していた本件建物を、他のこれらの類歴のない建物と同様に買い受けるということは通常考えられないことです。前記居住目的からみて、通常人においては、自殺の事情を知った上で買い受けたのであればともかく、子供も含めた家族での永続的な居住の用することははなはだ妥当性を欠くことは明らかなどとして、契約の解除まで認めました。損害賠償を売買代金の20%認定していますが、これは減価が20%あったと認定したのではなく20%の違約金の適用があると判断したためです。

評価

 この裁判例は居住目的で家族の永続的な居住することとその建物内で事故が起こったことを重視したもので、目的と建物の性質からすると解除もやむなしと思われます。