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ヒント集

vol.2

2015.04.20

先生!
またまた心理的瑕疵物件を
買っちゃいました。
どーしたらいいですか?

それは、またまた一大事!まずは落ち着いて。
前回紹介した
自殺や殺人などの事故が起きた物件(訳あり物件)で裁判上、問題となる具体的な要素から復習しましょう。
1.
事故、事件の内容(自殺、被害者多数か、事故の場所(屋内か屋外か))
2.
買い主の目的(居住用、倉庫、店舗、駐車場などによって基準は異なりうる)
3.
事故、事件の建物などが現存しているかどうか(建物が現存していなければ問題となりにくい要素)
★この要素は裁判例においてはかなり重視しているように思われます
4.
事故等からの時の経過の度合い(長ければ長いほど問題視されにくくなる)

前回以外のもので、参考になる判例はありますか?

前回は解除の損害賠償も認められなかった裁判例をご紹介しましたが、今回は肯定例も交えて更にご紹介致しましょう。

1:浦和地川越支判平成9年8月19日(損害肯定・約893万円)

事案の概要

 原告は平成6年12月、被告らから土地・建物を、代金総額7100万円で買い受け、代金を支払って、平成7年4月に不動産の引渡を受けました。
 ところが、その後、被告の関係者が平成6年7月右建物の中で首吊り自殺をしていたことが判明。原告は平成7年12月、被告らに対し、民法570条(本件売買契約の目的物である土地及び建物の隠れた瑕疵)により売買契約を解除したうえ、566条により売買代金額の返還を求めるとともに、契約の解除が認められない場合の損害賠償を請求した事案です。
 原告は、本訴訟提訴前に、被告に対し、契約の解除を求めていましたが、損害を埋めるため、自殺の現場の建物を原告の負担で撤去して(撤去費用などに93万2900円)更地にして6300万円で売却しています。

判断の内容

 土地と建物が一体として売買目的物件とされ、その代金額も全体として取り決められ、建物で自殺があったことは交渉過程で隠されたまま契約が成立したのであって、自殺の存在が明らかになれば、価格の低下が予想され、かつ本件建物が居住用であり、出来事が比較的最近のことから、民法570条にいう瑕疵に該当すると判断されました。
 本件売買契約当時の瑕疵の存在を前提とした場合の適正価格を認める証拠はないとしつつ、売買代金の差額(7100万円-6300万円+93万2900円=893万200円)を損害と認定しています。
*本件ではたまたま説明義務を果たして原告が売却したため、鑑定をしていませんが減価部分が顕在化したため、このような認定になっています。

評価

 時期も接着していて、本件建物も現存していました。実際に原告が転売したことによって瑕疵によって生じた価格は下落した結果も客観的に明らかになっていたので、当然の判断と思います。

2:横浜地裁平成元年9月7日判決(解除も損害賠償も肯定)

事案の概要

 原告は、被告から、昭和63年10月28日原告夫妻及び2人の子が居住する目的で本件マンションを代金3200万円で買い受け、手付金を支払いましたが、その後、本件マンションにおいて、被告の妻が約6年前縊首自殺をしていた事実が判明。
 そこで、原告は、本件マンションを居住用に買い受けたものであり、そのような物件であれば、絶対に購入しなかったものであるとして、契約の解除と損害賠償請求を求めるとともに、手付金の返還及び売買契約の違約金の条項に基づき売買代金の20パーセントにあたる損害賠償を求めた事案です。

判断の内容

 目的物が建物である場合、建物として通常有すべき設備を有しない等の物理的欠陥としての瑕疵のほか、建物は、継続的に生活する場であることから、建物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景等に原因する心理的欠陥も瑕疵と解することができるとし、それが通常一般人において、買主の立場におかれた場合、上記事由があれば、住み心地の良さを欠き、居住の用に適さないと感ずることに合理性があると判断される程度にいたったものであれば、瑕疵ということができるとしました。
 そして、この観点からみると、原告は、小学生の子供2名との4人家族で、永続的な居住の用に供するために本件建物を購入したものであって、この場合、本件建物に買受けの6年前に縊首自殺があり、しかも、その後もその自殺者の家族が居住しているものであり、本件建物を、他のこれらの類歴のない建物と同様に買い受けるということは通常考えられないことで、前記居住目的からみて、通常人においては、自殺の事情を知ったうえで買い受けたのであればともかく、子供も含めた家族での永続的な居住の用に供することははなはだ妥当性を欠くことは明らかなどとして、契約の解除まで認められたのです。
 損害賠償を売買代金の20%認定しているが、瑕疵によって20%の減価があったと認定したのではなく、20%の違約金の適用があると判断したためです。

評価

「永続的な居住目的」を重視した裁判例です。

3:東京地裁平成7年5月31日判決(解除肯定)

事案の概要

 本件は被告から土地、建物を買い受けた原告が、建物に付属する物置内において売買契約の約7年前に当時の所有者が自殺行為に及び、その後これにより死亡したことを、売買契約後に知り、隠れたる瑕疵があるとして、売買契約を解除し、解除に基づく原状回復請求権に基づき、代金の返還を求めました。これに対し、被告は、自殺行為に及んだのは建物そのものではなく、その付属の物置であること、自殺行為は現在から約10年も前のことであること、死亡したのは病院であり建物ではないことなどをあげ、瑕疵に該当しないとして争いました。主に瑕疵の存在を争った事案です。

判断の内容

 本件建物は、山間農村地に位置する一戸建住宅であり、その建物に付属する物置内で自殺行為がなされ、その結果死亡した場合、そのようないわくつきの建物を、通常の建物と同様に買い受けることは、通常人では考えられないことであり、原告も同様と認められました。さらに、売買契約は、自殺後約6年11月経過後になされたという点については、自殺という重大な歴史的背景、本件土地、建物の所在場所が山間農村地であることに照らすと、それほど長期ではないことなどを判示して、本件土地上に存在し、本件建物に付属する物置内で自殺行為がなされたことは、売買の目的物にまつわる嫌悪すべき歴史的背景に起因する心理的欠陥といえるとして、隠れたる瑕疵の存在を肯定し、解除まで認められました。

評価

 人の入れ替わりが少ない山間農村地というと土地柄を重視。人の出入りが多い都市部でこのような事実が風化しやすい場合には違った判断がなされた可能性があると思います。

4:東京地裁平成21年6月26日判決(損害肯定・売買代金の1%)

事案の概要

 本件は,被告から収益不動産を買い受けた原告が、購入後、かつて本件建物内で自殺をした者がいることが判明。隠れたる瑕疵が存在していた又は、事前に売主である被告から何の説明もなかったとして、被告に対し、民法570条等(本件売買契約の目的物である土地及び建物の隠れた瑕疵)に基づき、4400万円の損害賠償と遅延損害金の支払とを求めている事案です。

判断の内容

 自殺があったこと自体は「瑕疵」に該当するとしつつも、睡眠薬の服用によるもので、本件建物で死亡していないこと、近所で評判になっていたというものでもないことから、自殺があったことを過大に評価してはならないとしています。
 損害額については、原告が売買で取得した時点で既に2年が経過していること、本件自殺の事実は社会的にほとんど知られておらず、一定時期まで満室になっていて賃料収入が上がっていた、口頭弁論終結時点では5年以上経過していて、賃借人の募集に際して告知すべき重要事項ではないと考えられることなどから、軽微な瑕疵であるとして、売買代金の1%を損害として認定されました。

評価

 収益不動産で瑕疵によって、具体的なマイナスが生じているとはいいにくい事案で、損があったのかということが疑問という意識があったと思われます。収益不動産においては賃借人の募集に影響するかどうかが重要な要素でありますが、この点も告知義務は必ずしも必要としない期間になってきている前提のもとで損害は極めて軽微としたと思われます。