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ヒント集

vol.11

2016.02.10

先生!
入居者の家賃滞納で困っています。
契約書にも書いてあるし、
鍵を変えちゃおうと思うんです。

それは一大事!気持ちはわかりますが、やってはダメです。
損害賠償請求をされるかもしれませんよ。

大家業に滞納は頭が痛い問題です。しかし、契約に記載があるからと言って、入居者が家賃を滞納した場合に、大家側で賃貸物件の鍵を交換することは許されません。 契約を守らない入居者に腹立つ気持ちはわかりますが、何故してはいけないのかお話ししたいと思います。

滞納した方が悪いじゃないですか!

 滞納をさせない意識づけはもちろん、滞納による損害の拡大を防ぎ、明け渡しを実現するため、「1回でも家賃を滞納した場合には、直ちに部屋を明け渡し、鍵の交換をすることができる」という記載が契約書に盛り込まれている場合があるようです。
 しかし、契約書にあるからと、これを実行することはできません。何故なら、最高裁判決は、自力救済を行う=法律に定める手続きを取らずに相手の意思に反して、自ら無理矢理権利を実行することを、原則として許していないからです(最高裁:昭和40年12月7日判決)。

じゃあ、どうしたらいいんですか?

 気持ちはわかりますが、手順を踏みましょう。家賃の滞納問題は、未払い賃料の請求と建物の明け渡しを求める裁判の手続きをし、最終的な決着をすべきです。鍵の交換は直ちに居住する権利を侵害するものであり、入居者の不利益は極めて大きく、家賃の滞納回収や建物明け渡しを自力救済したと同視でき、損害賠償責任を負うことになると考えられます。

気持ち的に納得できませんが、 判例があるのですか?

 はい。あります。大阪簡易裁判所平成21年5月22日判決は、賃貸人が賃貸人の家賃滞納を理由に鍵を取り替えたことについて、賃借人の賃貸人に対する慰謝料などの請求を認めています。

事案の概要

 賃借人Xは平成20年2月、賃貸人Yからマンション一室を賃料月額4万3500円で賃借した。しかし、同年7月から賃料を滞納したことを理由に、同年8月と10月に建物玄関の鍵を交換され、建物に入ることが出来なくなった。そこで、Yに対し居住権の侵害を理由に慰謝料・逸失利益等として、Xは約140万円の損害賠償請求。それを受けYは、Xが賃料滞納常習者であり、Yとの信頼関係を著しく悪化させ、また連帯保証人からも部屋を閉めて欲しいと要望されたので、不法行為にはならないと主張。

判断の内容

①鍵の交換により建物から入居者を閉め出す行為は、通常許される権利行使の範囲を著しく超え、入居者の平穏に生活する権利を侵害するもので不法行為である。
②自力救済は原則として禁止されており、例外的に認められる場合もあるが本件の場合は違法な行為である。鍵交換・ロックアウトという間接的な圧力により未払賃料を支払わせようとした行為であり、自力救済の問題ではなく、権利の催告の方法として問題がある。また、賃貸借契約の解除をしていないので、ロックアウトは建物の不法侵奪であり、やはり自力救済の問題ではない。
③連帯保証人からの要望があったとしても、鍵交換の権利がYに発生するわけではない。
④法律無視の鍵交換や住居侵入行為は、国民の住居の平穏や居住権を侵害する違法な行為として非難されるものである。
⑤鍵交換の閉め出しによる費用と多大な精神的苦痛、代理人費用を考慮すると、Yの不法行為責任を認め慰謝料・逸失利益等合計金65万円の支払を命じています。