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ヒント集

vol.1

2015.04.06

先生!心理的瑕疵物件を知らずに
買っちゃいました!

それは一大事!まず落ち着いて。
いわゆる自殺や殺人などの事故が起きた物件(訳あり物件)が不動産の売買などの取引で問題する背景は以下の3点が考えられます。

1.
買い主や賃借人が自殺や殺人などが起きた物件には居住したくない、縁起が悪い、避けたいという感情がある。

2.
物件価格も低くなる傾向、賃料も低くせざるを得ない

3.
自殺や殺人などの情報は取引においてそもそも取引をするのかどうか、取引をするにしても価格に大きく影響してくる重要な事項になる。

知っていたら、買わなかったのに!

 そうですよね。わかります。このような物件の場合、相場よりも低く評価される傾向にあるので、売り主や仲介業者が知りながらもしくは知り得たのに説明せず、相場で売却してしまい、その後に買い主が知って(買い主が転売する際に他の仲介業者や買おうとする相手方から知らされて)問題が表面化することが多いようです。
 このような場合、説明を受けないまま買ってしまった買い主はどのような法的な対処ができるのでしょうか。

契約を白紙にできませんか?

 訳ありの内容やその程度によって、減価部分についての損害賠償請求にとどまる場合もあれば、契約の解除まで認められたり(代金の返還)、それに加えて損害賠償請求も出来る場合もあります。
 このような危険を考えると、売る側はきちんと説明することが非常に重要だと言うことになります(不利益な事実や情報ほど丁寧に詳細に説明することが大切)。

裁判になったらどうなりますか?

 自殺や事件などの訳あり物件で問題となる具体的な要素は概ね以下のとおりです。

1.
事故、事件の内容(自殺、被害者多数か、事故の場所(屋内か屋外か))

2.
買い主の目的(居住用、倉庫、店舗、駐車場などによって基準は異なりうる)

3.
事故、事件の建物などが現存しているかどうか(建物が現存していなければ問題となりにくい要素)
★この要素は裁判例においてはかなり重視しているように思われます。

4.
事故等からの時の経過の度合い(長ければ長いほど問題視されにくくなる)

参考になる判例はありますか?

事案の概要

 本件は既存建物を取り壊して、新たに建物を建てて、その敷地と新築建物を第三者に売却する目的で建物とその敷地を被告らから購入した原告が、建物を取り壊したのちに、建物内で2年ほど前に被告らの母親が首吊り自殺していることを知って、この事実は本件売買契約の目的物である土地及び建物の隠れた瑕疵(民法570条)に該当するとして、本件売買契約を解除したうえ、違約金の請求をした事案です。

判断の内容

 大阪地裁判決は、本件土地及び建物を買い受けたのは、本件建物に原告が居住するのではなく、本件建物を取り壊した上、本件土地上に新たに建物を建築して、これを第三者に売却するためであり、遅くとも平成10年5月12日までに本件建物は原告によって解体されていることから、本件売買契約における原告の意思は主として本件土地を取得することにあったとして(上記②の要素)、買い主の取得目的が既存建物ではなく土地にあり、既存建物が取り壊される運命であることを重視し、継続的に生活する場所である建物内において、首吊り自殺があったという事実は民法570条が規定する物の瑕疵に該当する余地があると考えられるが、本件において問題とされているのは、かつて本件土地上に存していた本件建物内で平成8年に首吊り自殺があったという事実であり、嫌悪すべき心理的欠陥の対象は具体的な建物の中の一部の空間という特定を離れて、もはや特定できない1空間内におけるものに変容しているなどとして、首吊り自殺があったという事実は、本件売買契約において、隠れた瑕疵には該当しないとしました。

評価

 この判決は、上記④の要素からすると、時はさほど経過していなかったものの、②現場となった建物に居住する余地がないことを重視したことや、買い主が一般消費者ではなく転売目的の業者であったことも背景にあったことから、この首つり自殺の事実について契約を解除するまでの事情とは認めませんでした。
 この判決のように各要素を総合的に判断するので、一律にどの場合に契約の解除が認められたり損害賠償請求が認められるのかという基準はないと言わざるを得ないでしょう。
 ただ、そうはいっても、転売する際にはこの自殺の事実は説明義務の対象になりうると考えられ(説明せずに転売したら説明義務違反の追及があり得るでしょう。)、このような事情がある物件の場合、そうでない物件より売りにくくなり代金も下がる要素となり、やはり、解除まで認められないとしても一定の損害はあるように思われます。
 この裁判例は売り主の責任が否定されましたが、あくまで結果論で不動産の取引時点においてはどのような紛争が生じたりどのような結果が出るか全く分からない以上、このような事実がある場合は、原則として説明義務があり、それを怠った場合には契約の解除や損害賠償請求といった紛争が起こりうるという前提で取引をせざるを得ないこととなります。